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賃金未払い、不安定な雇用…スクールカウンセラーが告白「劣悪すぎる労働条件」

ビジネス

フルタイム化には反対するワケ

 ただし、「フルタイム化は望ましくないのではないかとも考えている」と加藤さんは言う。

「学校でスクールカウンセラーに求められる専門性は幅広く、医療、保健、福祉などでの仕事の経験や知識は必要だと思います。また、スクールカウンセラーの“外部性”も重要です。つまり学校集団の外部にいるからこそ、教員とは異なる視点から保護者や生徒と接することができるという側面もあると思います。兼業を禁止し、スクールカウンセラーを学校に内部化してしまうフルタイム化には反対です

 実は心理職ユニオンのアンケートでも、理想の勤務形態を聞くと「1つの勤務校に毎日(週5日)出勤する(兼業不可)」という選択肢を選んでいる人は5%しかおらず、「現在と同じく1校につき38日勤務するが、雇用の安定性が保たれ福利厚生もある(兼業可能)」を選択した人が72%にのぼった。

体力が続く限りいまの仕事を続けたい

カウンセラー

 すなわち、雇用契約の無期化を望む一方で、フルタイム化は望んでいないということだ。自由記述でも「心理士として他領域での経験を積むことも大切だと考えている。今後も兼業可能な形態としてほしい」といった声が寄せられていた。

 加藤さんは「スクールカウンセラーの仕事はとてもやりがいがある」と話す。保護者の方や子どもから「話せるのはここだけなんです」と言われることも多く、外部のスクールカウンセラーは必要不可欠な存在だと感じている。

 精神的にも肉体的にもしんどいが、「体力が続く限りいまの仕事を続けていきたい」という。加藤さんのように長年の経験を積んだスクールカウンセラーが、その専門性を十全に発揮できる条件を労働条件や労働環境の面でも整えることが、子どもの育ちを支えるためにも重要であろう。

<TEXT/栗原耕平(首都圏青年ユニオン副委員長)>

首都圏青年ユニオン副委員長 。1995年8月15日生まれ。2000年に結成された労働組合、首都圏青年ユニオンで労働問題に取り組んでいる

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