2022年公開の「アマプラで観れる傑作邦画」4選。コロナ禍の恋愛を描く作品も
4)リアリティがありすぎる恋と決裂が続く日々
『恋は光』は文化系大学生のゲーム的恋愛映画だったが、同じ大学生でもかなり現実感があって泥沼な恋愛の末路を描いているのが加藤拓也監督の『わたし達はおとな』だ。大学でデザインの勉強をしている優実(木竜麻生)には、演劇サークルに所属する直哉(藤原季節)という恋人がいる。ある日、優実は、自分が妊娠していることを直哉に伝える。ふたりが一度別れていた期間に起きたというある事実とともに。
ふたりの男女が出会い、恋に落ちていくまで。そして決定的な決裂によって、互いに絶望するまで。その波が交互に描かれるこの映画は、そのリアリティも伴って高低差があり過ぎてしんどくなる。
本作は『勝手にふるえてろ』や『愛がなんだ』などを手がけたメ~テレによる「(not)HEROINE movies」という新しい映画シリーズの第1弾と製作され、今年は第2弾の『よだかの片想い』と第3弾の『そばかす』も順次公開された。
『わたし達はおとな』に描かれるのはある女性の肖像。傷を背負わされながらもそのことを誰にも告げることができず、日々心を摩耗しながら時には我慢しきれず吐き出して生きている等身大の姿。その様子を絶妙な距離感のカメラがじっと見つめ、その行く末を見守る。見続けた末にある、ラストシーンとエンドロールがとんでもない。映画はそこで終わるけれど、彼女の人生が続いていくことだけは明らかになる。
=====
ここまでに挙げた4つの映画には、「続いていく」という感覚が共通のテーマとして浮かび上がってきたように思う。それはコロナも戦争も終わらず、個々人が不安とワクワクを行ったり来たりしながら生活を送っている現在のムードに呼応するものだと個人的には感じている。
それをさらに補強するものとして、2022年12月16日より劇場公開中である三宅唱監督の『ケイコ 目を澄ませて』もぜひおすすめしたい。年が明けたからといって世界は一変しませんが、また素晴らしい映画に出会えることを期待して2023年も日々を過ごしていきましょう。
<TEXT/原航平>