「奨学金2400万円」の医学部生も。“借りる大学生”の実態を取材した結果
「奨学金は自己投資」なのか?
――奨学金は自己投資という言葉が出てきますが、大卒者の競争が激しい傾向は世界的にあるなかで、実際のところ元は取りやすいんでしょうか。
千駄木:日本の場合、とくに東京の一般企業で働く上では大卒になると選択肢が格段に広がるので、奨学金制度の経済合理性はあるかと思います。例えばアメリカは高校まで義務教育で、公共教育ということで学費の安い公立や州立の大学がたくさんあります。そのため、日本の高校に上がる感覚でコミュニティカレッジに進みますが、結局、私立に進まないとそれなりの職に就けないし、とんでもなくその学費が高いという。
――アメリカも大卒プアのような人がたくさんいるということですか?
千駄木:コミュニティカレッジが日本の高校みたいな位置付けなので、単純に比べられないところもありますけどね。その一方で、日本はどんな大学でも大卒カードさえ手に入れれば、基本はスタート地点につけるし、人生の転機になりやすい。
なので、まずは奨学金を借りてでも、大卒カードを得ることは多くの人の場合、やはり妥当かなと。新卒でも「学歴重視」から「経験・スキルを重視すべき」という議論が日本でありますが、奨学金を借りて大学進学した人からすると、やってられない話だと思います。実家が太い人が勝ちやすくなるので。
「地元の国公立大学を目指せ」は…
――やはり日本は国公立の学費が高くなっている問題はひとつありそうですね。
千駄木:東京の有名私大だと独自に地方出身者向けの給付型奨学金も充実していて、本人の希望や状況によっても奨学金制度の選択肢はだいぶ変わってくる。なので、単純に「金がないなら地元の国公立大学を目指せ」というアドバイスは、現状では適切じゃない気がします。