「奨学金2400万円」の医学部生も。“借りる大学生”の実態を取材した結果
現在の子育て世代はアップデートが必要かも
――ネットではどういう反応が多いんですかね。
千駄木:記事の内容とあまり関係ない自分語りが多いのは基本あるんですが、「奨学金は必要な制度だ」「借りてまで大学に行く必要ない」という主張の平行線が続いている印象です。“苦学生”というイメージもありつつ、片やバブル時代の雑誌を見ていると「奨学金を借りてウハウハ」みたいなノリの記事もあるのでって、ともすればそういう見られ方もされがちなトピックなのかもしれません。
――さすがに最近はSNSの反応などを見ても、そのイメージを抱く人はいないですかね。
千駄木:たまに「学費なんかちょっとバイトすれば稼げる」みたいなコメントも見受けられますが、ほかのユーザーたちからめちゃくちゃ低評価を付けられています(笑)。返済免除の制度など、奨学金制度はひと昔前からけっこう変わっていますし、国立大の学費の感覚なども含めて、現在の子育て世代はアップデートが必要なのかもしれません。
40歳まで奨学金を返し続ける憂鬱
――実は私の妻も1000万円ぐらい奨学金を借りていたらしく、奨学金ってそんなに借りられるのかとちょっと驚いた記憶があります。
千駄木:私立理系だと、大学院まで進めば1000万円コースになりやすいですね。JASSO(日本学生支援機構)の第一種と第二種には借入額の限度はあります。それぞれ毎月5万~6万円(国立か文系か、実家住まいか一人暮らしかで変わる)と12万円、合計すると17万~18万円が上限で、逆に下限は第一種も第二種も毎月24万円。
本書には医学部進学で2400万円を借りた人や、文系の私大で満額の800万円を借りた人も出てきますが、後者の方だと社会人になってからの返済額は月4万円弱です。私が取材した人のほとんどは毎月4万円程度借りていましたが、その金額でも4年間借りると200万円程度になりるので、それを40歳まで返すので月々の返済額は1万円ほどかかります。
――月1万円だと、大学卒業後、安定した仕事就くまでに二転三転しても、なんとかなるレベルではありますかね。その1万、2万円が給料日前の20代には大切だったりしますけど。
千駄木:当事者たちから「大卒カードを授けてくれたから奨学金を借りられてよかった」といった発言はよく聞きます。同時に「落ち着いて勉強できる環境があって、良い大学・良い就職先に入る金持ちはズルいという釈然としない気持ちや、40歳まで奨学金を返し続ける憂鬱も抱えているようです。