東大中退ラッパーが20代の悩みに答える「学歴を捨てる勇気がありません」
東京大学中退という異色な経歴を持ちながら、明晰な頭脳を生かしマルチに活躍するラッパー・ダースレイダー(41歳)が、20代若人の切なる人生相談に答える「新連載」です。
8年前に脳梗塞で左眼の視力を失い「片目のおじき」と呼ばれる彼。昨年は「余命が5年」であると告白し、日本のヒップホップ界に衝撃を与えました。
今回、そんなダースレイダーに寄せられたのは「学歴を捨てる勇気がない」という就活生からの相談です。
Q.自分の学歴とどう付き合っていけばいいの?
■21歳・男性・大学生■
「学歴を捨てる勇気が出ません。ダースさんと比べたら大した大学や学部ではないのですが、就職活動に直面し、どうしても自分の大学や学部を基準に考えて“損をしないよう”な考え方しかできません。
ダースさんは大学を中退してラッパーの道を選んだと聞きました。その決断に迷いはなかったのでしょうか? 僕は自分の学歴とどう付き合っていけばいいのでしょうか」
A.学歴は自分が持っている1枚のカードにすぎない
ダースレイダー:まず、迷いはなかったかという質問に関しては、まったくないと言うか、正直考えてすらいなかったですね。
そこに損得勘定が働いていれば、東大だったんで残っていたほうがいいっていう考えもあったかもしれないけど。
大学2年のときにラッパーとしてレコード契約をもらって、ライブもあるからすごく忙しくなってきて、そのときの自分をそれまでのいろんな自分と比較してみたら、「今が一番イケてる」って自分では思ったんだよね。
例えば、勉強している自分とか、サッカーしている自分とか、ゲームやってる自分とかと比較したときに、ラップをしている自分、人前に出てパフォーマンスをしている自分が、その他のどんな自分よりも一番輝けてるって思ったわけ。
そのときの僕の優劣の基準は、収入とかじゃなくて単純に“輝き度”で見ていて、もっともピカピカしているものを選んだから、そういった意味で迷いはなかったかな。
自分が何に向いているのかは、そこに自分がスパッとハマんない限りわからなかったりするから、迷いがあるってことは、自分がキラキラしてるなっていうものがまだ見つかっていないっていう状態なのかもしれないよね。
見つかっていないんであれば、急にポンと出会う可能性はあるから、常に心構えはしといたほうがいいと思う。そうなると、次に大事なのは、どんな環境に身を置けばいいのかってことになる。
そのときに学歴ってものがあったほうが、いろいろな舞台に自分を連れてってくれるのか、それとも学歴ってものは、その選択肢を増やすのに使えないのか、それを考えてみるといいと思う。
自分がキラキラできるかってことを基準に考えて、これが自分に一番向いてるなって思えるものがあれば、そこにいくために学歴が必要であれば使えばいい。例えば、旅行会社とか、いろんなところに出かける仕事に就きたいってなったとき、学歴が必要なこともあるかもしれないしね。
学歴ってものを、何をするか判断するときのひとつの道具、カードとして捉えればいいんじゃないかなって思う。まあ、持ってるものは使った方がいいよね、それは自分のカードだから。
ただ、それはたくさんある中の1枚のカードでしかないけどね。それが、自分が持ってる他のカードと比べてデカいものかどうかっていうのは、自分にしかわからない。ただ、カードゲームの中で、この手札持ってて、この場面にこれ使えるなって感覚で使えばいいと思う。