ココリコ田中と原作者が語るドラマ『うつヌケ』。「人生は悪いことも起きて当たり前」
――田中直樹さんは20代の頃、どう過ごされていましたか?
田中直樹:この世界に入って活動をスタートさせたのが、まさに二十歳のときでした。そこから食べられるようになるまで、5~6年かかったので、その期間はとても苦しかったですね。精神的にも不安定でしたし。仕事がないのを、お互い相方のせいにしていたりして。非常によくない20代前半を過ごしました(苦笑)。
――それでも夢を諦めずに、辞めずにモチベーションを保てたのはなぜですか?
田中直樹:この先どうなるのかわからない、不安だ、自信がないといった時期を、周りの先輩方が励ましてくれたのでなんとかやってこれました。それから、自分がおもしろいと感じているすごく好きな先輩が、仕事のないところから、どんどん仕事が増えていく姿を見ていたんです。
たとえば極楽とんぼさんとか、月亭方正さんとか、すごくお世話になっているんですけど、「俺らも仕事増えてるんだから、お前らも大丈夫だよ」とか、そんなひと言で救われました。当時ご一緒していた先輩方のひと言というのは、僕にはとても大きかったです。
サラリーマンと漫画家の2足のわらじ
――田中先生は、サラリーマンと漫画家の2足のわらじを履いてきましたが、そのことで有利に働いたことと不利に働いたことはありますか?
田中圭一:サラリーマンは月~金でやって、漫画家は土日でやってきましたので、社会人になってから30何年、“日曜日”ってないんです。サラリーマンも漫画も好きで両方やってきたのですが、単純に休みがないことによるデメリットはありますよね。
あと、実は一度結婚してすぐ離婚したんですけど、家族サービスみたいなものはほぼほぼ捨てなきゃいけませんでした。結婚して子供を作って、育ててというところは諦めないといけなかったかな。
――よかったところは。
田中圭一:漫画家だけだと絶対に経験できないことをサラリーマンはできるし、逆もしかり。サラリーマンは組織があって上下関係がある。漫画家は自由業ですから、企画から制作まで自分の裁量でできるけれど、失敗したら完全に自分の責任になる。全く逆ともいえる仕事を両方やったことによって、両方とも続けられた気はします。
あとはサラリーマンで培った折衝交渉する能力とか、人と会って取材して話を引き出す能力が取材漫画に生きてきたり、人が考えないようなアイデアを漫画で練るという企画力が、サラリーマンの仕事で生きたりしました。
副業は趣味じゃない。確固たる目的を持って
――田中直樹さんは、芸人と役者のお仕事をされています。
田中直樹:僕の場合はもともとコントが好きで、その中でキャラクターを演じることがすごく好きだったんです。お芝居も共通する部分が多いので、別のジャンルをやっているという意識がないですし、スムーズに行ったり来たりしています。
――いま、副業を始める人も増えています。そうした選択肢が増えている若者に、先生からひと言いただけますか?
田中圭一:私の知人がよく言っていることなんですけど、「お金がない、仕事がない」ってピーピー文句ばかり言っている人からよく話を聞くと、お金がないという人ほど、あまりお金が好きじゃないと。お金が好きな人は不満を言う前にお金についていろいろ考えて、儲けるために行動しているから、ちゃんと儲けているよと。これは一理ありますよね。
――確かに、言われてみるとそうかもしれません。
田中圭一:そして副業についてですが、副業って趣味じゃないわけですよね。自分の給料プラス何か別にお金を得て、自分の欲しいものを手に入れたいとか、生活を豊かにしたいとか、確固たる目的を持ってやらないといけない。