エンジン不正問題で「営業利益8割減」の日野自動車。苦境の中で“追い風要素”も
日野自動車の2023年3月期 第2四半期の決算が発表されました。前年比で増収を維持していますが、エンジン不正問題が尾を引いているのか、営業益は半減となっています。なお、通期の予想では営業利益は前期比82.3%減としています。
2022年3月の同社発表で明らかとなった不正問題により一部エンジンの「型式指定」が取り消されている状況ですが、利益が減っている一方で、なぜ増収を維持できているのでしょうか。近年の業績推移も見ながら、エンジン不正問題による業績への影響をみていきます。
エンジン不正問題の経緯
日野のエンジン不正問題は2022年3月4日に同社が行った記者会見から始まりました。積載量10tクラスの大型トラック「プロフィア」や4tクラスの中型トラック「レンジャー」などに積まれている3機種のエンジンについて、承認申請の過程で排出ガスと燃費を偽る不正があったと同社は発表しました。
燃費測定の際の計算値をいじる、最良データだけ採用するなど不正の手法はさまざまですが、各エンジンの燃費や排ガス性能が公表値を満たしていないことが明らかとなりました。同社は不正について国交省と経産省に報告したうえで、他機種を含む計4種のエンジンを搭載した車両を出荷停止に。
3月末には国交省がエンジン4機種の型式指定を取り消したことで、制度上でも同エンジン搭載車を生産・出荷することが不可能となりました。なお「プロフィア」については2022年10月現在でも取り扱っておらず、「レンジャー」も一部商品が取り扱い停止となっています。
不正対象車は56万台に
その後も調査が続くなかで2003年から不正を行っていたことが明らかとなりました。3月当初時点で不正対象車は約11万台と公表されていたものの、8月には影響が日野製エンジンを積んだ建機メーカーにも及ぶなど、不正対象車が56万台にのぼることが分かりました。
日野のエンジンは自社製のバス・トラックだけでなく建機や親会社であるトヨタ製トラックにも積まれています。8月下旬には「ヒノノニトン」のキャッチコピーで有名だった「デュトロ」も生産停止となり、国内向けトラックの全車種が生産停止に追い込まれました。
その後は国交省が一部車両の出荷を認めたことで10月より「デュトロ」、11月から「レンジャー」の生産が再開されますが、大型の「プロフィア」に関しては搭載エンジンに対する型式認定の目途が立っておらず、本格的な生産再開には至っていません。