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エンジン不正問題で「営業利益8割減」の日野自動車。苦境の中で“追い風要素”も

ビジネス

北米関連、エンジン不正…大幅赤字の理由

 翌2022/3期は「収益認識に関する会計基準」を適用しているため注意が必要です。同年はコロナによる需要減よりも生産能力、供給面での課題が売上台数回復の足かせとなりました。東南アジア向けが好調なうえ、国内も一定の需要があったものの、半導体不足やコロナによる部品供給不安が生産台数の制限につながりました。

 この点は他の自動車メーカーも同じ影響を受けています。なお、経常利益は増益となったものの、前年に引き続く北米関連の損失(約273億円)や、期末直前に発表したエンジン不正問題に関する損失(約400億円)が最終利益の大幅赤字につながりました

 後者にはリコール費用(約100億円)と燃費に関する税制優遇追加納付費用(約300億円)が含まれています。ただし、将来発生する損失に備えた「引当金」による損失であり、実際に日野自動車が400億円の資金を失ったわけではありません。「現金及び現金同等物」は増えています。

不正で国内は落ち込むが…

株価

 エンジン不正により一時国内向けトラックの生産が停止となったものの、2023/3期第2四半期は7334億円とむしろ6.4%の増収となりました。国内売上台数はエンジン不正による出荷停止や半導体不足で約1万8,600台と前年比で36.3%も減少しており、確かに不正問題の影響が出ています。

 しかし、型式認定の問題が及ばない海外向けに関してはASEANを中心とした経済活動の回復により、売上台数は約5万5,800台と24.7%も増加しました。全体では約400台の増加になっています。エンジン不正問題で国内販売が落ち込む中、海外販売の好調が全社売上高の増収に貢献した形です

 一方で利益面に関しては、利益率の高い国内向け車種の販売が減少したことにより収益率が悪化、営業利益は前年比で47.8%減とほぼ半減しました。そのうえで不正に絡んだ特別損失を計上したことにより、最終利益は34.8億円と前年比で70%も減少しています

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