“値下げ戦略”が大コケ。無印良品「商品力強化」に立ち返るのは必然か
出血大サービスの大誤算
2021年8月期はコロナ禍という前提においては堅調な業績を残しました。セグメント利益率は9.6%でコロナ前の2019年2月期を1.6ポイント上回っています。このとき、ECの売上は減少しましたが、店舗の客数が好調でした。
値下げが悪手であることが鮮明になったのが2022年8月期。国内の既存店の客数は前年度比100.9%。ほとんど変化がありません。値下げを行ったため、客単価は94.6%と前年を大幅に下回っています。その結果、既存店の通期の売上は95.4%となりました。主力の衣料品・雑貨が苦戦しています。
無印良品は2021年8月末に約200品目の大規模な値下げを行っていました。羽根まくらは1190円から690円へ42%引き下げています。この思い切った値下げが仇となりました。
エネルギー価格高騰の影響も大きい
値下げ戦略の失敗に加え、コスト高が追い打ちをかけました。良品計画の2022年8月期の運搬・配送費は301億円。2021年8月期と比較して35億円上昇しています。原価率は52.8%で1.8ポイント上昇しました。
こうした状況を受け、良品計画は2022年10月13日の決算説明会にて「値下げによる集客効果は限定的であることから、今後は商品マーケティングを強化する」と明言。無印良品は購入カテゴリーが少ないことを課題ととらえており、商品の幅を広げることによって拡大する余地は大きいとしています。
良品計画は2022年9月30日に500円以下の日用品などに特化した新型店「無印良品500」を三鷹駅構内にオープンしました。この店舗が好調。500~1000円程度の日用品の訴求が弱かったことを課題とし、今後は商品力の強化や訴求を行うとしています。
安易な値下げ戦略を改め、商品カテゴリーの見直し、商品力と訴求力の強化という、企業活動のあるべき姿に立ち返りました。無印良品は強力なブランド力を持ち、国内外に数多くのファンを抱えています。一連の値下げが終了した今、経営スタイルの大転換は消費者やファンにとっても多いに歓迎すべきことでしょう。