『孤独のグルメ』『深夜食堂』などの名作に

――本作を書くにあたって参考にした漫画やそれ以外の作品があれば教えてください。

ヨコオタロウ：いろんなグルメ漫画を参考にさせていただきましたが、やはり『孤独のグルメ』（扶桑社）、『深夜食堂』（小学館）、『きのう何食べた？』（講談社）等の名作には学ぶところが多かったですね。どれも、食事そのものではなく、食事を通して人生を描いているところが味わいにつながっています。

　今回の『吉野家兄弟』でも、牛丼に関するウンチクは控えめにして、一般の人の目線で描くようにしています。

吉野家で美味しい「組み合わせ」は？

©Yugiri Aika・YOKO TARO/LINE Digital Frontier

――作中、紅しょうがを立体的ににこんもり盛るエピソードが出てきますが、自身のエピソードでしょうか？

ヨコオタロウ：紅しょうがは僕自身の体験ですね、しびれるくらい入れるのが好きなので。掲載されている他のエピソードも、自分の経験に基づくものがほとんどですが、機内食の吉野家はまだ遭遇したことがないので、資料と想像だけで書きました……いつかぜひ食べてみたい！と思う一杯です。

　ちなみに、持ち帰り牛丼にコショウと山椒をかけるアレンジは、やってみたら美味しかった組み合わせなので、興味のある方はぜひ試してみてください。

――「LINEマンガ」での連載と、一般漫画誌での連載で何か違いはありましたか？

ヨコオタロウ：あまり違いはなかったですね……強いて言えば、掲載紙が届かないことでしょうか。あ、あと、雑誌掲載と違い、ある程度スケジュールを柔軟に対応していただけるな、と感じました。単に自分がサボリがちなせいでもありますが。

＜取材・文／シルバー井荻＞

【ヨコオタロウ】
1970年生まれ。愛知県出身。神戸芸術工科大学を卒業後、ナムコ、ソニー・コンピュータエンタテインメントを経て、ブッコロを立ち上げ。同社代表取締役兼ゲームディレクター。携わった作品に「Voice of Cards 囚われの魔物」「ドラッグ オン ドラグーン」など。マンガ『君死ニタマフ事ナカレ』や舞台の原作などでも、幅広く活躍する