“偶然”から生まれた「うまい棒」大ヒットフレーバー、値上げしても人気の秘密
子供が「プロデュース」できる環境を
しかし2007年頃、うまい棒の原材料であるトウモロコシの価格が高騰。リーマンショックなどの社会情勢も影響し、大きさを維持できなくなり、1g少ない現行サイズとなった。それだけでなく、ここ数年は賃金や運送費の引き上げ、原材料の高騰、消費税増額など値上げを考えるさまざまな出来事が起こっている。
「ただ、お小遣いの100円で、いろいろな味を楽しんでいただきたいというのも大きなコンセプトのひとつ。消費税は別にしても、うまい棒なら100円で10本買える。30円と20円のお菓子を買って、うまい棒を5本買うなど選ぶ楽しみがあるのも駄菓子の醍醐味です。また、限られたお小遣いのなかでやり繰りするうちに、子供たちが何を買うか? とプロデュースできる環境を維持したいとの想いもありました。そのため10円を保つ努力をしてきましたが、昨年頃からのもろもろのコストアップに耐え切れなくなったのです」
社内では、「重さを減らして価格を維持する」といった意見も出た。しかし、原材料や輸送コストの高騰が続き、社会情勢も不安定。この先、どうなるか見通しが立たない状況を踏まえ、値上げを敢行したのだ。
駄菓子屋がなくなっても販路を開拓
「量を減らしていくと、『うまい棒、小さくなったな……』とお客様をガッカリさせてしまいますし、うまい棒のよさや価値も失われてしまう。ただ、10円を値上げするなら20円という意見も出ましたが、一気に倍だとお子様は100円で5本しか買えなくなってしまう。15円や12円などさまざまな意見が出るなか、最終的には100円で、できるだけたくさんの種類を選んでいただきたいという想いを込めて、12円という価格に決定しました」
うまい棒が誕生した当初は主流な販売先であった駄菓子屋だが、いまは見かける機会もすっかり減ってしまった。けれど、うまい棒の販路は拡大している。「夢や」や「一丁目一番地」といった駄菓子専門店をはじめ、スーパーやドラッグストアなどだ。
「お子様だけでなく、親子や三世代で駄菓子を購入してくれることも増えました。お父さんやお母さん世代が子供の頃にうまい棒を食べていて、30本入りの袋が自宅に3~4種類あるという方もいらっしゃるようです」
販売先や購買層は、うまい棒の発売当初から比べると大きく変化している。そして、値上げも敢行した。それでもうまい棒が愛されてやまないのは、多くの人に商品を知ってもらう努力や愛される味への追求に余念がないからかもしれない。
<取材・文/夏川夏実>