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<漫画>東京湾の深海にある「理想の水族館」を生んだ、ダイオウイカと“女性漫画家”の存在

暮らし

バイトをしながら漫画家を目指していた時期も

――たしかに、マグメルには幅広い職業の方が登場しますね。

椙下:職業に焦点をあてて考えているわけではないのですが、実際に水族館に来る人っていろんな人がいるので、自然といろんな職業の登場人物を描くことになっているのかなと思います。

――どれくらい水族館で働いていたんですか?

椙下:絵を描きながら、2年くらい働いていました。周りにもそういう活動の話はしていたので、皆さん応援してくださって、水族館のオリジナルグッズのイラストを描かせてもらったりもしました。水族館を辞めてからは、別のバイトをしながら漫画家を目指していました。連載を始めるまでは1~2年かかりましたね。

――数年で初連載というのは、比較的早いスピードに感じます。絵はどこかで学ばれていたんですか?

椙下:大学では美術科で、仏教芸術というお寺とか神社とか仏像に関する美術の勉強をしていました。高校で日本史の授業がとにかく好きだったのと、絵を描くのが好きなこともあって美術にも興味があったので、昔の美術を学ぼうと思ったんです。でも美大に通っていたわけではないですね。

漫画を描き始めたきっかけは

マグメル

「マグメル深海水族館」(C)椙下聖海/新潮社

――では、独学だったんですね。絵や漫画を描くうえで、影響を受けた方はいますか?

椙下:イラストレーターの中村佑介さんは、中学生の頃にすごく好きになって、真似して描いたりしていました。特にいろんなモチーフが入っているイラストがすごく好きで、今でも漫画の扉絵の構成なんかは、影響を受けていると思います。

 漫画家だと入江亜季さんがいちばん好きで、リスペクトしています。本屋さんで『乱と灰色の世界』5巻の表紙が大きなパネルで飾られていて「なんだこれは! すごく可愛い!」とひとめぼれしたのが出会いでした。そこから作品を読み始めて「こんな絵の漫画があるんだ!」とすごく衝撃を受けました。たぶん入江さんの作品に出会っていなかったら、漫画自体描いてみようと思ってなかったと思います。

――いろんなタイミングが重なって「マグメル深海水族館」が生まれたんですね。

椙下:深海も深海生物も好きだし、漫画を描きたいと思っているし、まだないってことは「私が描くしかない」と思いました。深海ってまだ何もわかっていないことが多い、手つかずの場所で、そこが魅力的でもあるのですが、漫画においても手つかずの題材だと思ったんです。水族館がテーマの漫画はあったりしますが、深海生物がテーマの漫画って見たことがなくて、たぶん今もないんじゃないかなと思います。

<取材・文/Marino>

【椙下聖海】
2015年、第10回新潮社漫画大賞Rookie @ GOGO!! にて「水底の彼女」で佳作受賞。2017年、初連載となる『マグメル深海水族館』がスタート。海洋生物、昆虫など、生き物大好き。いちばん好きな生き物は、イグアナ

マグメル深海水族館1

マグメル深海水族館1

ある日、館長の大瀬崎湊人と出会ったことで、彼の人生に変化が訪れる―――。深海に憧れ、生き物を愛する青年の成長に胸が熱くなる、海洋ロマン開幕!!

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