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「なんもしない人を貸し出す」サービスが話題。“中の人”に聞く脱力哲学

学び

――すごく理解のある奥様なんですね。

森本:よくよく思えば、妻との関係は、お互いを“なんもしない”対象として見ているからこそ成立しているのかも知れません。変に気を遣うだとか、そういう意識が働かないのが、一緒に過ごしていく上で大きい気がします。

 依頼がない日は、子どもの世話や家事をしています。時間があれば、妻と子どもと一緒に出かけることもありますよ。むしろ依頼がない日のほうが活動的かもしれませんね。

――「レンタルなんもしない人」の活動に関して、今後の展望などはありますか?

森本:飽きてきたら辞めるつもりです。ところが、今のところ飽きる気配がない。でも、逆にみんなに飽きられたら依頼が来なくなるし、そうなれば、いくら自分が続けたくても続けられませんよね。

 今は貯金を切り崩して生活してますけど、お金が尽きたら辞めるだろうし、妻の気が変わったら辞めるだろうし、危ないことに巻き込まれたら怖くなって辞めるだろうし。自ずと辞めざるを得ない状況はいくらでも想定できます。

 今後の展望みたいなのはありません。あえて言うとしたら、さっき挙げたような想定できる辞めどきじゃなくて、想定外の良いことが起こればといいと思います。

――想定外の良いこと、とは?

森本:実はとある依頼でカンボジアに行くことが決まっています。もちろん往復の飛行機代、旅費も諸経費として依頼者負担です。

 海外に行く依頼もそうですけど、自分の活動がきっかけで何か新しい物事が生まれたらいいですよね。これからどう転がっていくか、自分の活動ではありますけど傍観者の気持ちで楽しみたいです。

――最後に、読者に向けてメッセージをください。

森本:メッセージは、ないです。あえて言うなら「ストレスはよくない」ということですかね。確固たる成功体験があるわけじゃないし、誰かに物申す立場じゃないと自分では思っています。ただ「レンタルなんもしない人」の活動で得られたものはとても大きいと思います。

 ひとつは経験です。経験ってお金と違って減りようがないじゃないですか。経験すればするほど得られるばかりだと思います。あとはTwitterのフォロワー数が増えれば自己顕示欲が満たされますし、自分の中の欲求がどんどん満たされていくような感覚があります。あとは人から必要とされて感謝されたり、社会貢献している感……。あ、でも“なんもしない”というのが一番の欲求です。人の役に立ってるかどうか考えるのもしんどいし、ストレスになるので。

<取材・文/石井通之>

元エロ本編集者。高校卒業後、クリエイティブな分野に憧れて美術大学を目指すも、センスと根気のなさゆえに挫折。大学卒業後、就職した風俗雑誌の編集部でキャリアをスタートさせる。イベントレポートとインタビューが得意(似顔絵イラスト/koya)

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