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「100年後にラーメンの歴史を残したい」“引退表明”したラーメン博物館の館長が描く夢

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東京に進出した「一風堂」は卒業

 誘致基準を満たさなくなったため退店した店舗が「一風堂」(株式会社 力の源ホールディングス)だ。

 ラーメン博物館に出店した1994年当時、店舗は博多店のみ。しかし、翌年、東京都渋谷区広尾に東京1号店(恵比寿店)を出店する。これは「本店およびその周辺にしかない店」という誘致基準が、満たせなくなることを意味する

「(都心に)店舗出しちゃったから。迷惑かけちゃうから。卒業(退店)するよ」と退店を申し出たのは、一風堂オーナーの河原成美氏から。誘致基準を守る想いは同じだった。

 ラーメン博物館は、誘致基準を厳しくする一方、店舗側のリスクは低減させている。岩岡氏は「ラーメン店側に、経営数字上のリスクはない」と言い切る。内装はラーメン博物館側が用意するため、投資が不要。賃料についても、他のテナントビルより有利だ。

 一般のテナントビルの賃料は、固定家賃に、売上に一定率を乗じた金額を加える「最低保証付歩合家賃制」が多く採用されている。店の売上がゼロでも、固定家賃分の賃料が発生する。

ラーメン店側にリスクなし

新横浜ラーメン博物館

株式会社 新横浜ラーメン博物館代表取締役 (館長)岩岡洋志氏

 対して、ラーメン博物館の賃料は「完全売上歩合賃料制(売上に一定率を乗じた金額だけ)」である。店の売上がゼロなら、ラーメン博物館への支払いもゼロ。これは、出店店舗にとって大きな安心材料となる。

 ラーメン博物館に出店するのはご当地ラーメンだ。首都圏出店はもちろん、複数店舗展開の経験がない店も多い。売上が予測しづらい未知の土地で、固定費となる家賃がかからないことは、不安とリスクを大きく減らしてくれる。

 一方、この賃料制はラーメン博物館にとっては、大きなリスクだ。ラーメンが売れなければ、出店店舗からの収入もなくなる。不利な制度を導入したのはなぜか。岩岡氏は「我々は集客する責任を負う、ラーメン店さんはお客さんを喜ばせる責任を負う、ということ」と答えた。これは、博物館とラーメン店が「運命共同体」ということの表れでもある。

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