井村屋「やわもちアイス」、3年の月日をかけた開発秘話と“海外への挑戦”
商品の量産化工程で苦労したことも
実は通常のアイスであれば、半年から1年ほどで新商品を開発できるが、やわもちアイスに関しては3年もの歳月を費やしたという。
「餡やアイスは他の商品でも材料として使っていましたし、おもちに関しても冷凍和菓子事業の中で、冷凍の大福を出していたので、やわもちアイスの中身を作るのに、それほど苦戦はしませんでした。ただ、商品を人の手で作ることはできても、商品化に向けて工場のラインに落とし、量産化していく工程で非常に苦労しました」
とりわけ、冷凍下でもやわらかく、かつ弾力のある食感のおもちを開発するのに苦戦したそうだ。冷凍すれば、硬くなり過ぎて食べられないおもちを、最適な原料や配合バランスを熟考し、何度も試作を繰り返した。
さらに、食べやすい「一口サイズ」を目指したものの、均等な大きさで5個のおもちを配置するのは困難を極めた。
おもちを5個均等に並べる機械を作成
「おもちの数に関しては、3個では少ないし、4個は縁起が悪い。5個だとちょうど見栄えも良くなるので、今もやわもちアイスにのっているおもちは5個なんです。ただ、当時はおもちを5個均等に並べる機械がなかった。機械メーカーに相談しても、前例のないことだったため、『できるわけない』と何度も突き返されました。それでも諦めずに、何度も足を運んで機械メーカーに直談判しにいき、おもちを均等に並べる専用の機械を製造するためのやりとりを重ねました」
従来のアイスの新商品開発であれば、1~2回のやりとりで専用の機械が作れるが、やわもちアイスの場合は一筋縄ではいかず、約10回もの試作を繰り返すなかで、ようやく量産化の目処が立つ機械を作ることができたという。これで商品化も見えてきたかと思えば、今度は工場で何時間もラインを流していく際に、トラブルが相次いでしまい、なかなか量産体制の構築ができなかった。
「やわもちアイスを作る工程の中に、急速冷凍をする工程があるんですが、おもちを早く固めないと、下の層にあるアイスのほうへ沈んでしまい、おもちが見えなくなってしまう。この時間を短縮するのに苦労しました」