いきなりステーキとガスト、両者赤字も明暗くっきり。創業者ならではの荒業が
「ペッパーランチ」を売却しても店舗の閉鎖を決断
しかし、一瀬邦夫氏は徹底的な店舗の閉鎖に踏み切ったのです。ペッパーフードサービスは、2020年9月にペッパーランチ事業を85億円で投資ファンドに売却しています。このとき、会社が傾いて事業を切り売りしたとの批判がありましたが、どちらかというと退店する費用を捻出するために、売却の道を選んだと言えるでしょう。
飲食店が撤退するのに必要な原状回復費用の負担は会社にとって大きく、退店による減損損失で自己資本が大きく毀損する可能性があるためです。
邦夫氏はワンマン経営者として知られていますが、強力なリーダーシップと実権を握っている創業者でしかやり遂げられない難易度の高い技です。
不採算店の徹底的な閉店を進めた主力のいきなり!ステーキ事業は2022年12月期第2四半期において、1億300万円の事業利益を出しています。赤字なのは「ステーキくに」などのレストラン事業、「とんかつソース」などの商品販売事業です。どちらも赤字額は数千万円と低く、業績へのインパクトはさほど大きくありません。
「ガスト」「から好し」の2枚看板化を推進も…
ペッパーフードサービスは、すでに再建の目処がついているのです。「いきなり!ステーキ」はコロナ禍に半分以上の店舗を閉鎖しましたが、すかいらーくの2021年12月末時点の店舗数は3098店。コロナ前の2019年12月末から4.9%ほどしか減少していません。
主力ブランドである「ガスト」は、閉店ではなくテイクアウトができるから揚げ専門店「から好し」との2枚看板化を進めました。
しかし、その効果が思うように出ていません。2022年12月期第2四半期のすかいらーくは、24億2300万円の営業損失(前年同期間は4億5900万円の営業利益)を計上しました。すかいらーくは国際財務報告基準であるIFRSを採用しています。
営業利益の中には営業外費用が含まれます。すなわち、時短協力金(109億円)が含まれているにもかかわらず、黒字化できていないのです。売上高から売上原価・人件費・販管費を引くと、90億円のマイナス。つまり、本業においても全く利益が出ていないことになります。