コロナ自粛、単価ダウンの「葬儀業界」。苦境で“増収キープ”できた会社はどこか
コロナの感染拡大が始まってから2年以上たちました。第6波、第7波とたびたび起きる感染のピークは各業界に打撃を与えています。今回取り上げる葬儀業界もコロナ禍で大きく影響を受けた業界のひとつ。お通夜を省略するなど、コンパクト化が進み、業界各社の利益も大幅に減少しました。
葬儀業界はコロナ禍でどの程度影響を受け、今後はどのような方針をとるのでしょうか。決算資料を参考に各社の動向を見ていきます。
ティア:葬儀場運営のほか墓石販売も
株式会社ティアは名古屋を中心として全国に展開する葬儀社です。葬儀場運営のほか墓石販売を行っています。2021/9期における各事業の売上高は(1)葬儀事業119億円、(2)フランチャイズ事業4億円とFC事業の収入はわずかしかありませんが、店舗数でいうと直営77店舗・FC55店舗体制となっています。近年(2018/9期~2021/9期)の業績推移は以下の通りです。
【株式会社ティア(2018/9期~2021/9期)】
売上高:123億円→128億円→119億円→122億円
営業利益:13.2億円→11.6億円→6.0億円→8.9億円
最終利益:9.0億円→7.9億円→3.5億円→5.4億円
葬儀件数:10248件→10923件→11353件→12599件
店舗数:102店→116店→127店→132店
規模拡大も収益性が下がり続ける
同社は中長期200店舗体制を掲げ、規模拡大に努めてきました。2019/9期は愛知・東京を中心に出店を続けたほか、提携企業に対する営業活動を積極的に実施し、葬儀件数は増加しました。しかし、核家族化や葬儀の縮小化といったトレンドで、葬儀単価の低下によって売上高は伸び悩んだようです。
翌2020/9期も出店を続け、死者数の自然増も相まって葬儀件数が増えました。しかし、同年度からコロナ禍が始まり、葬儀自体は中止にはなりませんでしたが、自粛に伴う大幅な規模縮小によって単価が減少し、売上高は落ち込みました。販管費は前年と同等ですが、減収が営業利益の減少に寄与しています。
続く2021/9期も依然自粛ムードは変わらず、葬儀件数・店舗数は共に増えたものの、売上高は感染拡大以前の水準を上回ってはいません。一方で業務の内製化や宣伝広告・採用活動の見直しで経費を削減し、増益には成功しています。
推移を見ると、葬儀のコンパクト化に加え、コロナ禍での自粛が葬儀単価の低下をもたらしており、これが規模拡大の足かせとなっていることが分かります。同社は人口動態から葬儀件数自体は増え続けると見込んでおり、今後も規模拡大を目指すとしていますが、1店舗あたりの収益性は低下するでしょう。