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汚物がなぜジュポッと消える?新幹線のトイレにまつわる素朴な疑問

暮らし

列車のトイレが持っている長い歴史

トイレ

 短い区間の電車ならともかく、新幹線など長距離を走る列車にはトイレが必需品だ。だが、新幹線のトイレについて不思議なことがある。使用した経験がある人ならわかるだろうが、新幹線のトイレで水を流すとジュポッという音とともに、すべてが吸い込まれていく。どうしてあのような仕組みなのか、疑問に思う人も多いだろう。

 列車のトイレにも長い歴史がある。かつてのトイレは垂れ流し式で、線路の上に汚物をまき散らしながら走っていた。そのため駅や線路周辺の人々が悪臭に悩まされるなど、いわゆる「黄害」問題が発生していた。一応、停車中や市街地ではトイレの使用を控えるルールがあったが、守らない人も多く、あまり効果を上げなかったのである。

 その後は、粉砕式というトイレが登場した。汚物と処理液を混合、粉砕してタンクで殺菌・脱臭してから車外へ排出するというものだった。垂れ流し式よりはずいぶん改善されたが、それでも沿線の被害がゼロになったわけではなかった。

トイレの汚物がジュポッと消える秘密

 新幹線をつくる際にも、トイレをどうするかは大きな問題になった。高架を走る新幹線では、汚物を放出する方式のトイレは使えない。まず、すでに導入されていた汚物を溜めるタンク式のトイレの導入が計画された。しかし、タンク式の場合には、タンクの容量が列車の運行に影響するため、高速で走る新幹線には不向きだと判明した。

 そこで採用されたのが「循環式」のトイレだ。あらかじめ汚水タンクに消毒液と水の混合液を入れておき、汚物を汚水タンクに流したら、それをフィルターに通して再利用するというものである。列車のトイレの水が青いのはその消毒液の色なのだ。この方式なら汚物を車外に出さず、汚水タンクの小型化も実現できる。

 だが、まだ臭いが残るという難点があった。そこで、循環式を改良した方式が導入された。水で流した汚物を圧縮空気によって一気に吸引して、汚水タンクに送るという「真空式」のトイレだ。現在の新幹線に使用されているのはこの方式のトイレ。新幹線のトイレで水を流すときに、ジュポッという音がして一気に吸い込まれていくのは、そのためなのである

 真空式のトイレが導入されて、1回に使う水の量が減り、吸引口を瞬時に閉じられるので悪臭もシャットアウトできるようになった。新幹線では最新技術が、車体や走行に直接関連する装備ばかりでなく、トイレにも駆使されている。

<TEXT/レイルウェイ研究会>

子どもの頃、電車の先頭車両に乗り込み興味津々運転席を覗いていた気持ちをもったまま大人になった鉄道ファン集団。「鉄道は夢を運んでいる」を合言葉に、多くの人に鉄道の魅力を伝えたいと、幅広いネットワークを駆使して情報を発信。乗客の目線にこだわった情報収集力には定評がある

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