野球少年からヒット作家へ…人気TikTokerが明かす「衝撃を受けた作品」
サイン会に泣きながら女子中学生が
――反響はどうでしたか。
けんご:世に出るまでは不安でいっぱいでしたが、好意的なコメントやメッセージを、SNSや手紙でたくさんいただきました。嬉しかったのは、紀伊國新宿本店さんでのサイン会が終わる直前に、制服姿の女子中学生がやってきて、「間に合った」と泣きながら喜んでくれたことです。SNSでしか接したことのなかったファンに直に会えて、しかも感激してくれたので僕もとても嬉しくなりました。
――ファンに直に会えたことも小説を出版したおかげですね。小説は描写が大切であるといわれますが、けんごさんはどのような工夫をしたのでしょう。
けんご:初めて小説を読んでくれた人が、「また小説を読みたい」と思ってくれるような作品を目指しました。一言でいえば「奥深い小説の世界の入り口なるような小説」です。そのため読者が想像しやすく、また読みやすいと感じてくれるためには、どうしたらいいかということに苦心しました。会話を意識的に多くしたり、改行の位置にこだわったりするなど、可能な限り読み進めやすくしましたね。
人生しくじっても何とかなる
――収録作品のうち、10代や20代の心に響く描写が多いのは「落ち葉」という短編小説ではないでしょうか。会話も印象的と感じました。「やりたいことなんか、なくていいんじゃないのかな」とか、「しんどかったら、やめていいんだよ」、「これは逃げなんかじゃないよ。ひとつの選択だ」などなど。けんごさんの同世代や若い世代に対して、「失敗しても何とかなるよ」というエールが贈られているような気がします。
けんご:「落ち葉」は、僕の思いが特に込められている短編です。人生しくじっても何とかなるさというのは、僕の考えに近いものがありますね。大学の時にSNSを使った小説紹介をはじめてから、自分の人生が大きく変わりましたから。
――TikTok投稿から小説家デビュー作の出版へと、活動の幅が大きく広がりました。初めて小説を執筆してから発見したことがありましたら、教えてください。
けんご:「小説を書ける人と書けない人の違い」がわかったことです。最後まで書ききることができたから、小説家になれる人の定義もわかりました。