『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』編集者が語るコミュニティの未来
佐渡島:最近はリファラル(推薦)でしか募集していないんだけど、それでも1回に80人は集まる。コルク自体はクリエイターのためのエージェント会社で、その中で「コルクラボ」をやっているけど、根本の思想は同じなんだよね。……ちょっと古い話をしてもいい?
――いいですよ(笑)。
佐渡島:そもそも18世紀半ばの産業革命よりも前の時代に……。
――だ、だいぶ昔の話ですね(笑)。
佐渡島:ごめん、ごめん(笑)。でも、その頃、情報っていうのは人が直接、他人に伝えるしかなかったんだよね。言わば人そのものがメディアで、その人自身が村を出ない限り、情報は門外不出という。
産業革命以降は、新聞や雑誌をはじめとしたマスメディアが作り出した情報を受け取るようになった。だから、出版社にとって作家や作品を知ってもらうにはマスメディアをコントロールすることが重要だった。
ただ、今みたいにインターネットが普及して、個人レベルでの情報発信が容易になると、個人がエンパワーメントされるようになってきたんだよね。
コルクラボには3万部の雑誌と同じ“バズ効果”
――いわば、個人のパワーの集合体のほうがマスメディアよりも影響力が大きくなってきた、ということですよね。
佐渡島:例えば「コルクラボ」のメンバーは2018年8月現在約200人いるけど、僕が新連載の作品を無料で配って、彼らに広めてもらったら、だいたい3万部刷っている雑誌に掲載するのと同じくらいのバズ効果があると思っていいんじゃないかな。
――人を介して紹介すると、熱量もあるし、親近感も伝わりますからね。実際に『ドラゴン桜2』(三田紀房・著/講談社)の第1巻が出たときに、「コルクラボ」のメンバーで70冊ほど購入して手渡しで配りながら、作品の良さを伝えるということをやりましたね。
佐渡島:僕と南君、さらには「コルクラボ」のことを知っている人から伝わる情報だと広まり方がまったく違う。
コルクの創業当初から、密なコミュニケーションが取れるファンコミュニティは、作家のエージェントをやっていくうえでは、雑誌そのものに取って代わるという考えがあったんだよね。
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⇒ 「今の20代は我慢しない方法を探すのがうまい」コルク代表・佐渡島庸平氏
<取材・構成/石井通之>