アメリカはなぜ銃乱射事件を止められないのか?/映画「ダウンレンジ」
去る8月26日(現地時間)にアメリカ・フロリダ州で起こった銃乱射事件。
アメリカでは今年234件目であるこの銃乱射事件は(※1)、改めて銃規制について物議を醸しました。来る9月15日にアメリカを震撼させる銃乱射事件を暗示するかのようなバイオレンススリラー『ダウンレンジ』が公開されます。
しかも、監督は『ヴァーサス』(2001年)、『あずみ』(2003年)や『ルパン三世』(2004年)などの話題作を手がけ、現在ハリウッド最前線で活動する日本人映画監督、北村龍平。本作の見所とともに、アメリカの銃乱射事件の背景を考えてみましょう。
銃乱射事件の社会的恐怖を描いた『ダウンレンジ』
アメリカの山道を走る、6人の大学生を乗せた車のタイヤが突然パンク。ところが、タイヤを取替えようと車から出て来た大学生を襲ったのは銃弾でした。携帯も通じない山の一本道でなんとか犯人の“射程距離(ダウンレンジ)”から逃げようとしますが、一人また一人と撃ち殺されていきます……。
銃乱射事件を舞台にはしていませんが、“いつ、誰が、どこで、誰に”撃たれるかもしれない恐怖が銃乱射事件を示唆しているかのような本作。
それに、狙われるのが学生ということもアメリカの銃乱射事件と共通しています。事実、銃乱射事件が起きる場所は仕事場か学校で、被害者も加害者も若者であることが多いのです(※2)。
アメリカではなぜ銃乱射事件が多発するのか?
米ニュース番組『CNN』のWeb版記事によると、1966年から2012年の間に世界で発生した銃乱射事件のほぼ3分の1は、アメリカで起きたのだとか。(※2)アメリカの人口が世界の5%しか占めていないことをふまえると、やはりアメリカでは銃乱射事件が多発していると言っても過言ではないでしょう。
銃乱射事件の犯人のほとんどは、駆けつける警察官に射殺されたり自殺を図ったりしていることから、『大量殺人の“ダークヒーロー”』の著者である思想家のフランコ・ベラルディ(ビフォ)は、銃乱射事件は若者による「自殺テロ」だと考えています。
一見、「政治的・イデオロギー的・宗教的な理由から発動する」一連の事件は、絶望、屈辱、貧困に追い詰められ自殺を決心した若者が、大量殺人によって社会に復讐しているのではないか――。
勝者と敗者を生み出す現代資本主義社会において、敗者が勝者に成り代わる唯一の表現方法が大量殺人なのではないか――とベラルディは説明しています。(※3)