「発達障害の恋愛」の知られざる男女格差…モテるのは女性ばかり?
当事者が陥ってしまいがちな失敗とは?
続いて当事者が良い恋愛をするための工夫を光武さんに聞いてみました。
「相手が当事者か定型発達かは関係なく、言葉のコミュニケーションが取れる間柄でないと恋愛関係を成立させるのは難しい気がしています。あとは自分の特性をポジティブに捉えてくれる相手であること。障害ではなく、その人の個性としてちゃんと理解してくれるかが重要だと思います」
プライベートにおける発達障害のカミングアウトについては、姫野さん、光武さんともに「仕事に比べてそれほど重要ではない」と一致していました。
また、恋愛に関しては当事者が陥ってしまいがちな失敗もあるようです。
「発達障害の方の特性で、物事をイチかゼロで考えてしまう傾向があります。白か黒かはっきりさせたがる、といえばいいかな。たとえば人間関係でいうと『この人は僕のことをわかってくれる』、『この人はわかってくれない』と、頭の中で完全に分けてしまったりすることがあります。
そうした特性もあって、自分と同じような経験をしてきた人に対して『僕もその気持ちわかる! だから君も僕と同じだ、それなら僕の気持ち全部わかってくれるでしょ!?』と自身を重ねてしまいやすいんです。そして舞い上がってしまい相手に強く迫って引かれてしまう。
また、そうやって自分と相手を重ね合わせる場合、たしかに上手くいけば濃く、特別な関係になるかも知れませんが、でもちょっとでもズレが生じると激怒したり、相手を全否定してしまう。僕も20代の頃は散々苦労しました」(光武さん)
ある部分で相手と共感できたとしても、基本的には別の心を持った他人である。ごく当然のことのように思えますが、発達障害の当事者はなおさら意識する必要がありそうです。
特性は「この人、可愛い」と思ってもらえるチャンス
最後に特性のために周囲から“非モテ”のレッテルを張られがちな、当事者男性がモテるためのアドバイスをいただきました。
「僕は発達障害の男性にこそ、モテの資質があると思います。だって魅力的な人もたくさんいますからね。要は見せ方の工夫だと思います。たしかにADHDのいろんなことに興味を持ってしまう衝動的な傾向は、幼く見えるかもしれません。
でも、『少年の心を忘れていない純粋な人』とも言えるじゃないですか。これは好きな相手に『この人、可愛い』って思ってもらえるチャンスだと思います。あと、これは発達障害に限らないかもしれませんが、苦労話ばかりをつらつら話す人ってあまり魅力的じゃないかもしれません。
逆に、子どもっぽく見られようが、我が道を行き、自分のことが好きで、好きなことを突き詰めている人は、障害があるなしに関わらず魅力的です。確かに女性の場合は、発達障害の特性をポジティブに捉えられる社会の土壌があるけれど、男性だってひと工夫を加えれば充分モテると思いますよ!」(光武さん)
自分を魅力的に見せる工夫。恋愛下手な男性からしたら、光武さんのアドバイスは当事者のみならず、すべての男性の背中を押してくれそうです。
<取材・文/石井通之>