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オンキヨー破産は必然だった?原因は投資ファンドの“ハシゴ外し”か

ビジネス

財務状況が壊滅的…資金調達に奔走

株価

画像はイメージです

 2020年3月期にオンキヨーAV事業の売上高は前期比61.0%もの減少に見舞われます。債務の支払い遅れが継続したことで、取引先が取引条件の見直しを要求。生産を縮小・停止せざるを得ない状況へと追い込まれたのです。この期に16億円もの事業損失を計上しました。

 オンキヨーはグループ全体で98億8000万円もの純損失を出して債務超過へと転落。資金繰りが悪化し、財務状況が壊滅的となったオンキヨーは資金調達に奔走します。増資の引き受け手となったのはEVOファンドでした

 EVOファンドといえば、MSワラントと引き換えに資金を出すことで有名な投資ファンド。MSワラントは「行使価額修正条項付新株予約権」と呼ばれるもので、前日の株価よりも1割程度安く新株を購入できる権利を持ったものです。MSワラントを取得した者は確実に儲けを出すことができる一方、オンキヨーの既存株主は損をする仕組みと言えます。

 オンキヨーは2020年12月にEVOファンドを引き受け手とした第10回、第11回、第12回の新株予約権の発行を発表。調達額は第10回が12億円、第11回が25億円、第12回が25億円で、行使されれば62億円が調達できる大規模なものでした。

EVOファンドはハシゴを外したのか?

 EVOファンドは2021年2月に第10回新株予約権を行使。次も計画通りに行使されれば債務超過を解消し、上場廃止も免れる局面でした。しかし、EVOファンドは第11回、第12回の新株予約権を行使しなかったのです。これによって資金調達の道は閉ざされ、オンキヨーは上場廃止となります

 EVOファンドがハシゴを外したようにも見えますが、第11回と第12回を行使してEVOファンドが得られるのは優先株。優先株は優先的に配当を得られる株式ですが、市場で売却ができないなどの制限があります。MSワラントは市場で取引できるからこそ即利益が得られる魅力的なもの。無配当を続けていたオンキヨーの優先株を引き受けるメリットはありません

 オンキヨーは主力のAV事業を、VOXXとシャープの合弁会社に33億円で売却。2021年6月をめどに譲渡を進めていたものの、欧州での審査が長引いて延期を余儀なくされます。このわずかな遅延が致命傷となりました。債務の支払いができず、破産となったのです。

<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ>

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。現在はコンサルタントという名の中小企業経営者のサンドバッグ役を務めるかたわら、経済の面白さを広く伝えるため、開示情報を分析した記事を書いている。好きな言葉は美食家・北大路魯山人の「硬め、麺少なめ、ニンニクマシマシ」

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