居酒屋チェーン・金の蔵「大ピンチからの挑戦」運営企業社長が明かす、水産業への進出
中に入ってこそわかる沼津の魅力
――実際に沼津で漁業を始めてみて、その魅力はなんですか?
長澤:まずは魚種の豊富さです。日本周辺では、約2300種類の魚介類が獲れるんですが、そのうち1000種近くが沼津が位置する駿河湾にいるんですよ。東京ではあまりしられていない、珍しい魚も入ってきます。例えば、鯛よりも美味しいと言われるものの、知名度が低い「ニベ」という魚を知り、東京のお店で出せるようになりました。また、沼津は古くから干物の町として有名。地元に水産加工の優れた技術を持った方もたくさんいらっしゃって、協力体制もとれます。
――現在、沼津の人々の反応はどうですか?
長澤:2020年の夏頃は、居酒屋を大量閉店させていた時期だったこともあり「都落ちしてきた会社」と思った方もいらっしゃったかもしれませんね(笑)。しかし今では、地元に入っての取り組みを認めていただいて、信頼してくださっている方が少なからずいるような気がしています。
「困ったらSANKOに相談しよう」と思っていただいていますし、「SANKOがいないと漁協が存続できない」と、私どもが困っていたら助けるために動いてくれます。船を無償でいただいたのが、まさにその証だと思います。船は漁師さん達からすると、代々に渡って生活と命を守ってきたものであり、「魂」そのものですからね。責任は思いです。
この先の展望は「食料自給率」を変えたい
――強固な関係で立ち上げてきた水産部門ですが、今後はどのような展開を考えていますか?
長澤:これまで東京で行っていた商品開発を沼津の拠点でも行うようになっています。漁港の加工場で捨てられていたものを、美味しいおつまみに変えたりと、無駄をなくしながら今までにない美味しいものをお客様にお出ししたいと考えています。
食料自給率の低い日本は、昨今の世界情勢から見ても食料確保が重要になっています。第一次産業である漁業はますます重要になってきますよね。そして、もう1度、沼津での漁業を生活のできる仕事にして、後継者不足の問題も解消して行きたいと思っています。そのために先日、私自身含めて社員の約20名が船舶免許をとりました。近々、私も含めて、自社の漁業研修船を使った漁の実習に入ります。
=====
社長自らの船舶免許取得からも本気が感じられるSANKOの新たな取り組み。一時は大ピンチに陥った同社が再起する起爆剤になると同時に、私たちが美味しい沼津の魚を食べられる機会が増えれば喜ばしい。
<取材・文/Mr.tsubaking 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>