「爆撃なんて怖くない」と笑う子供も…ウクライナ入りしたジャーナリストが語る“戦争のいま”
「ウクライナ人は僕なんかよりもはるかに強い」
キーウへの帰路に際しては、路上に設置された地雷に寸前まで気づかず、急停車することもあった。3月20日夜、8人が亡くなったショッピングセンターの空爆は、カオル氏が滞在する宿から500mしか離れていなかった。
「ドーンという大きな音と衝撃で目が覚めたけど、外出禁止令が出ていたので、そのまままた眠りにつきました。いつのまにか、砲撃や爆音は気にならない体になってしまいました」
そう言いながら、カオル氏は「ウクライナ人は僕なんかよりもはるかに強い」と話す。
「爆撃で家を失ったキーウの人を取材したときに笑顔だったことが忘れられないんです。生きているだけでラッキーだと。肉親を失った方はともかく、大きな怪我を負った方も笑顔で取材に答えてくれる人が少なくありません」
「巨人が歩いているよ」と諭す両親
「なかでも私が懇意にしているウクライナ人とロシア人の夫婦は笑顔を絶やさない。2人にはアグネッサという娘さんがいるんですけど、彼女は空爆のサイレンが鳴ると『サイレンごっこよ』と家の隅の椅子に隠れてしたり顔をする。
爆音が轟いたら、両親は『巨人が歩いているよ』と諭す。だから、『爆撃なんて怖くない』と笑う子供が多いんです。それは悲しい現実かもしれませんが、ウクライナ人の強さであると思う。私は香港を離れてしまった人間ですが、香港の民主化運動と大きく異なるのは、キーウのすべての人が勇武派(暴力的抵抗も辞さない香港民主派グループ)であること。最後は命を投げ出しても戦うという人が多い」
今回、カオル氏には戦禍を物語る写真を提供してもらったが、直近のキーウは近郊の街からロシア軍が撤退したこともあって活気を取り戻しつつあるという。