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経済不況のまま値上げが相次ぐ日本。“危険なインフレ”が招く「深刻な状態」とは

ビジネス

家電が大幅なマイナス価格になったのは?

 続けて、電気冷蔵庫や空気清浄機などが大幅なマイナス価格になったカラクリを説明する。

「燃料や穀物は日常生活を送るために必要不可欠。値上げしても買わざるを得ませんが、所得が伸びなければ、反対にあまり必要ではないモノは消費を控えます。そのため、家電製品などは買い控えが起き、売れないために価格が下がったのです

 現在はインフレとデフレが入り混じったいびつな状態にあるという。

「2022年2月の消費者物価上昇率は、前年同月と比べて0.9%。ただ、生鮮食品及びエネルギーを除く総合、いわゆる“コアコアインフレ”は▲1.0%でした。生鮮食品やエネルギーの価格は、天候やハプニングの影響でとても大きく変動するため、中央銀行がインフレ、デフレの基調を判断する時、“コアコア”の指標を使うのが世界標準です。この結果を見る限り、2022年2月段階では日本は『まだデフレである』と言えます」

長期不況が続く現在は「深刻な状態」

ガソリンスタンド

 依然としてデフレ下ではあるものの、今後は消費品の価格上昇もうかがえる。松尾氏は、不況とインフレが混在した過去の事例の特徴に注意を促す。

「景気停滞なのにインフレしている状況は“スタグフレーション”と呼ばれます。1973年の第一次オイルショックでもたらされた事態を表すために生まれた言葉です。でも、オイルショックの影響により、1974年は戦後復興後初めて実質成長率がマイナスになりましたが、この年の物価統計を見ると、光熱費が50%に迫る上昇を見せたことを筆頭に、あらゆる品目が二桁の値上がり、マイナスのモノなどひとつもなかったです

 その後、1970年代の日本経済は“スタグフレーションの時代”と言われましたが、実質成長率は4~5%ありました。失業率も2%台と、今の日本から見れば好況もいいとこ。実際は『ただのインフレ時代だった』と言えるでしょう。1970年代は物価も上がったけど賃金もそれ以上に上昇しており、私の両親もヒラでしたが簡単に家のローンを返せました」

 ところが、1970年代に起きたスタグフレーションとは異なり、「現在は同じスタグフレーションでも、その内容は全然異なります。長期不況から続くデフレと燃料価格や穀物価格といった輸入インフレが共存した深刻な状態です」と指摘。経済成長が実現しないなか、インフレが見え隠れしている状況はとても危険である。

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