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ネットカフェで寝泊まりしながら「ホームレス支援」を行った26歳女性が起業した理由

ビジネス

 いま住んでいる家を失ったり、スマホが使えなくなったりした状況を想像したことはあるでしょうか? ほとんどの人が、そんなことは考えもせずに暮らしていることでしょう。しかし、内閣府が2月7日に発表した調査「日本経済2021-2022」では、25~34歳の年齢層の中で「所得格差」が広がっていることがわかりました

いえとしごと

「いえとしごと」を運営するRelight株式会社の代表取締役社長、市川加奈氏

「住所や寝る場所がない」「所持金をほとんど持っていない」といった人に、寮付きの仕事などを紹介し、再出発のサポートをおこなっている「いえとしごとへの相談者は20~30代が約6割を占めているのが現状です。

「いえとしごと」を運営するRelight株式会社の代表取締役社長であり、自身も20代である市川加奈氏(28歳)に、相談に来る若者たちの実態や26歳という若さで事業を立ち上げた経緯などについてインタビューしました。前半・後半に分けて紹介します。

この業種で起業しようと思ったキッカケ

――市川さんが起業されたのは、2019年。26歳という若さで、家を失った方のケアをする事業をはじめようと思ったのは、何がキッカケですか?

市川加奈氏(以下、市川):私が住んでいたのは東京でも青梅市の奥多摩寄りのほうで、人間よりも野生動物のほうが多いのではないかと思うくらい過疎地域だったんです。クマも出ますし、電車も東京ですが1時間に1、2本程度しか来ません。家はみんな持ち家という感じで、家がないというのが理解できなかったんです。

 高校生のときに都心に出るようになってはじめて、外で寝ている人たちを見ました。そのときは介護福祉士を目指していたので、施設に入っている年齢ぐらいの方たちが外で寝ていて、「どうして誰も声をかけないんだろう?」というところから疑問がスタートしました。

根本的なことを解決したい

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炊き出しの様子

市川:その後、大学で勉強をしているときに、まわりの人たちの進学率が高かったこともあり、すぐに介護福祉士として働くよりも、1度じっくりと貧困系の勉強をしてみようと。国内外のいろんな問題を知って、何を仕事にすればいいのかと考えました。

 いろんな国で体験した問題よりも、日本のホームレス問題のほうが私にとっては身近に感じられましたし、気がついたら現地へ足を運んだり、調べたりしていることも多かったです。

――「いえとしごと」では、一時的な仕事や住まいを紹介するのではなく、生活を立て直してもらうために長期で働ける寮付きの仕事や、行政の支援に繋げているのですね。

市川:はい。大学生で炊き出しなどのボランティアをやっていたとき、根本的なことを解決したいという気持ちがずっとありました。炊き出しのようなその日生きるための支援も大事ですが、その状況から抜け出すための仕組みづくりをしたかったのです。

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