水タバコ「シーシャ」を日本に広めた社長の決意「編集者で稼いだ金を全額投入」
編集者として稼いだ金を全額投入
――シーシャの市場は広がると思ってましたか?
杉山:減りはしないと思ってましたね。屋内喫煙が完全に禁止になるリスクはありましたので、完全に消えるか、増えるかの二択だと思っていました。今から参入する人は法律がどうなるか気になるところですが、僕はすでに店舗を構えていたので、他にできることもないし、失うものはないと思って。本業で稼いだ金を全てぶちこみ、店舗を増やしました。
――借り入れはしなかったのですか?
杉山:4店舗目くらいからは借り入れましたが、その前は借りられませんでしたね。インチキ臭い商売で、当時脱法ハーブも流行っていたので、印象も悪くて。銀行からも「水タバコ、シーシャってなんやねん!」という感じで貸してもらえず、当時は知名度自体がなかったんですね。
――始めてみてシーシャの需要に気づきましたか?
杉山:ターミナル駅などアクセスがいいところに作れば、皆とりあえず行くでしょうという気持ちで出してたのですけど、当時は需要がすごかったですね。アラブ系の社長さんや外交官も来たりして、カオスでした。今は、チルアップという少しチャージが高めのお店も作ったので、客層は分かれましたが。
シーシャ業界の「スターバックス化」
――店作りの参考はありましたか?
杉山:最初、空間は下北沢のお店を参考にしていて、昔はシーシャを吸うことがアトラクションだったので、アヘン窟のような作りにしていました。今は日常的に吸えるようになったので、とっかかりやすいお店にしようと思いました。とにかくまったり落ち着く内装を心がけています。
またオペレーションは「スターバックス化」を目指しました。とにかく業務をマニュアル化して、どうやったらスタッフ全員が同じ味のシーシャを提供できるか考えました。そこで、アプリを開発して、何と何のミックスと入力すると、勝手に計算してくれて、同じ味を再現できるようになりました。シーシャ屋は店員によってミックス具合が違うのが普通なのですが、飲食店もバーもレシピがあるのが当たり前じゃないですか。その当たり前がシーシャ業界にはなかったので、チェーン店のマニュアルを取り入れました。
――味の安定化が計れるわけですね。
杉山:でも、原料の葉っぱは農産物なので、出来が悪いと仕入れ値も高騰しちゃう。業者が勝手にグレードを落として、味は変わってしまうことも多いです。工場ごとに出荷してくるタバコの質も違うし、年ごとに味が安定していないのが問題ですね。同じタバコなのにフレーバーも、着色料も違ったりして、正直、対応しきれません。
それよりも提供後に、お客さんそれぞれの好みに合わせて、都度、調整することが大事だと思っています。あと普通のシーシャ屋は葉っぱを燃やすための炭を何回も変えに来ると思いますが、うちは炭一本をはめられる筒を特注で作ってオペレーションを簡略化しています。