評判作『大怪獣のあとしまつ』実現まで苦労と思わぬ反響。松竹×東映Pが語る
限られた道具しかなくとも個性を
須藤:この仕事をやるにあたっては2つのパターンがあると思っています。自分が面白いと思うものはみんなもそうだと思ってスタートするか、みんなが面白いと思うだろうものを作るのか。つまり自分が中心にあるのか、他人が中心にあるのか。僕は徹底的に自分が最初なんです。そこが絶対ルールです。
――そのルールはどうやって築かれたのでしょう。
須藤:それを考えていて困ってたんですけど、僕はどこか仕事だと思っていない節があるんです。好きなことをやっている。ただ好きなことだからこそ自分を裏切れない。もちろん、「こういうお題目でやってください」と言われることもありますよ。
かつてテレビ部でやっていたときもそうでした。でもそのときでも、与えられた道具のなかで何とか自分の気に入るものをまず作る。特に若いときは、たくさん道具ももらえません。でも限られた道具であっても、自分の好きな組み立て方をして勝負していかないとオリジナルにならないし、面白くない。自分がどう組み立てたいかから始めるのが僕のルールです。
自分の名刺を作っていくしかない
――事実として、イチ会社員でもあります。どんな苦労がありますか?
須藤:苦労か。たくさんあるよね。
中居:ありますね。たとえば脚本家さんや監督さんとは、中居個人として接して作品を作っていきたいと思っています。とはいえ会社に所属しているので、進捗を上に報告したときに、右だと言っていたものを「左にせい!」ということも当然あるわけです。
昨日まで「この脚本、めちゃくちゃ面白いですね。傑作が出来ましたね」と言っていたのに、会社から「イチから書き直せ」と言われてそのことを伝えなきゃいけない。それはしんどいです。
そのときに会社からのフィードバックをそのまま伝えたら「会社の言いなりなら、お前と話す必要はない」となりますよね。僕は、いつも作っている側のメンバーの一人として、会社を説得したいと思っています。できないことのほうが当然多いですけどね。でも会社がこう言っているからと言うだけの人にはなりたくありません。
須藤:大変なことはたくさんありますよ。特に若いころは、頑張っているのに周りはどうして認めてくれないんだろうと、毎日忸怩(じくじ)たる思いでした。では認めてもらうためにはどうしたらいいのか。
目先にあることをやって少しでも自分の名刺を作っていくしかないんです。その名刺を作るまでに、20代の頃なんかはずっとぐるぐる回っていました。それでも止まらなかったのは、やはり好きだからですよね。好きなものがあるのは強い。別に仕事じゃなくても、趣味でもなんでもいい。何かひとつ好きなことがあれば頑張れると思います。