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ヤマダに吸収された「大塚家具」がニトリ、IKEAになれなかった理由

ビジネス

最初から無理があった大衆向け路線

ニトリ

 そもそも久美子氏が目指したニトリ・IKEAはSPA(Speciality Store Retailer of Private Label Apparel:製造小売業)という業態であり、商品の企画・製造から物流、小売まで一貫して自社で管理するビジネスモデルをとっています

 例えばニトリの場合は、東南アジアに工場を設置しているほか国内外に大型物流施設を保有しており、大量生産・大量販売・大量輸送によって徹底的なコストカットを実現できるため、低価格でも利益を確保できます。

 一方、大塚家具はそのようなシステムを有しておらず、製造も高品質な家具職人・メーカーに頼っていたため、大衆向けを狙った戦略は中途半端な結果になってしまいました。

久美子社長が取るべきだったのは…

 ニトリの台頭や不景気による消費の冷え込みもあり、久美子氏が就任する以前から大塚家具の業績規模は縮小傾向にありました。経営権を握ってから悪化が続いてしまった大塚家具ですが、どのような戦略を取るべきだったのでしょうか。拡大が止まった企業が取るべき戦略として次の3つがあげられます。

(1)海外展開
(2)他事業への進出
(3)縮小・利益確保

(1)の海外展開については「日本=高品質の家具」というイメージが薄いため、進出は難しいでしょう。別ブランドとして展開するにしても相当な広告宣伝費を要します。まずはアジア諸国への進出も考えられますが、所得が少ないうえ、ユニクロのような低価格品ではないため、受け入れられる可能性は低いとみられます。

(2)はITなどの固定費の少ない業種や他事業との相性が良い企業が得意とする手段です。SNS企業からゲーム事業へ進出する例、ヤマハのように楽器メーカーが音楽教室を開設する例などがみられます。しかし大塚家具に関しては、いきなりITに参入することもできませんし、例えば店舗内で服の販売やレストラン経営を実施しても両事業とも成績が伸びることは考えられないため、他事業への進出は難しいでしょう。

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