ヤマダに吸収された「大塚家具」がニトリ、IKEAになれなかった理由
ニトリ、IKEAを目指したものの…
久美子氏のもとで悪化した経営状態をみていきましょう。 決算資料によると近年の業績は以下の通りです。途中で決算期が変更となっているため、2015/12期から2018/12期、2020/4期(※1)、2021/4期(※2)という順に記載します。
【大塚家具 2015/12期~2021/4期推移】
売上高:580億円⇒463億円⇒411億円⇒374億円⇒349億円(※1)⇒278億円(※2)
営業利益:4億円⇒▲46億円⇒▲51億円⇒▲52億円⇒▲76億円(※1)⇒▲21億円(※2)
当期純利益:4億円⇒▲46億円⇒▲73億円⇒▲32億円⇒▲77億円(※1)⇒▲24億円(※2)
まずは2018/12期までの業績を見ていくと、見事なまでに売上高減少・営業利益の赤字拡大が続いていることが分かります。久美子氏は就任後それまでの会員制を廃止し、入会しなくても商品の購入が可能な『IDCパートナーズ』制を導入しました。いわゆるポイントカード制で、100円ごとにポイントが貯まる他、駐車料金が無料になるなどの特典が付与される仕組みです。
店舗運営では敷居が高そうなイメージを払拭するため、受付を小さくし消費者がふらっと立ち寄れるような店舗にリニューアルを進めました。商品を高価格帯から中価格帯に変更し、ニトリ・IKEAのような店舗を目指していったわけです。また、アウトレット品に特化した店舗やソファー専門店を開店するなど消費者を集めるための新しい取り組みに着手しましたが、大型店では面積縮小や一部転貸を実施するなど客足が遠のいてしまいました。
コロナ禍の影響は少なかった
法人向けやEC強化などの施策も業績回復には寄与しませんでした。お家騒動によるイメージダウン、店舗スタイルの変更によって高価格帯の消費者が遠のいた一方、狙いだった低・中価格帯の消費者が集まらなかったことで業績が悪化したと考えられます。
2019年12月にヤマダデンキの子会社となった2020/4期も相変わらず不調で、決算期が伸びたにもかかわらず売上高は減少しました。黒字化を目指した翌年の2021/4期は、一見減収しているようにみえますが、同期間で比較すると10%の増収となっており、ヤマダデンキの店舗内における家具販売が増収につながったようです。
巣ごもり需要で家具販売が好調だったこともあり、コロナ禍の影響は少なかったと見られます。黒字化は達成できなかったとはいえ、赤字額が大幅に改善しており、ヤマダデンキの経営手腕がうかがえます。最終的に久美子氏は退任、大塚家具はブランドとして残るものの法人としては消滅に至りました。