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キリンビールがトップに返り咲いたCM戦略。タモリが「うまい」しか言わないわけ

ビジネス

シンプルなマーケティングが奏功

ビール グラス

 サントリーの新ジャンル「金麦」は食卓シーンを幸せにするというコンセプトを打ち出し、ライフスタイルへの訴求を強く打ち出しました。それは2007年から放送されていた檀れいさんを起用したCMによく表れています。放送当初のものは、檀れいさんが大切な人の帰りを待つシーンが描かれ、「金麦」を口にするシーンはありません。

 2014年ごろのぶりしゃぶを食べるCMも同様で、檀れいさんはグラスの金麦を手にしていますが、一度も口にはしません。幸せな食卓のそばに「金麦」があるというイメージを醸成しているのです。

 さて、「本麒麟」はどうでしょうか。印象的なCMに江口洋介さんとタモリさんが出演するものがあります。30秒のCMの中でタモリさんは5回「うまい」という言葉を口にします。しかしながら、この手のCMにありがちな「キレがある」「のどごしがいい」「コクがある」などという言葉は一切口にしません

 ここに、本物のビールのように美味しく飲める商品を目指すというコンセプトが強く出ています。ビール表現の枠に閉じ込めてしまうと、「本麒麟」がビールを追随する商品となってしまうためです。あくまでビールのように美味しく飲めるものであり、飲み物として「うまい」ものと訴求しているのです。ビール各社が今後どのような経営戦略を打ち出すのか。ぜひみなさんも注視してみてください。

<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ>

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。現在はコンサルタントという名の中小企業経営者のサンドバッグ役を務めるかたわら、経済の面白さを広く伝えるため、開示情報を分析した記事を書いている。好きな言葉は美食家・北大路魯山人の「硬め、麺少なめ、ニンニクマシマシ」

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