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岸田首相、注目が集まる「2022年年頭会見」。安倍・菅路線からの脱却なるか

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立場は野党の一議員とは比べ物にならないが…

岸田文雄首相

「聞く力」を標榜する岸田文雄首相の記者会見

 置かれている立場が大きく異なりますから、岸田首相に立憲民主党の2人を見習えと言いたいわけではありません。

 岸田首相は公務・党務などで多忙を極める一国の宰相ですから、時間的にもセキュリティ的にも野党の一議員とは比べ物になりません。岸田首相が思い立っても物理的な制約は多く、すぐに街へ出かけて市井の人々に意見や要望を聞くことは非現実的です。

 繰り返しになりますが、聞く力とは市井の人々から意見を聞く力のことであり、政治家や政党の意見・要求を聞くことではありません。街へ出かけることは難しくても、官邸に招いて意見や要望を聞くことはできるはずです。今だったら、Zoomなどオンラインで市井の人たちから話を聞く方法もあります。

「聞く力」はどのように発揮されるのか?

 10月4日に首相に就任した岸田首相は、2022年1月4日に就任3か月を迎えます。当初の予定なら、岸田首相はこの日にアメリカ・ニューヨークで開催される核拡散防止条約の再検討会議に参加することになっていました。広島出身の岸田首相は、以前から「核なき世界」を目指すと標榜してきました。それだけに、年が明けると、核拡散防止条約の再検討会議への参加が注目されていたのです。

 岸田首相はコロナを理由に参加を見送ると表明しています。しかし、それを額面通りに受け止めるわけにはいきません。なぜなら、岸田首相はコロナが余談を許さない衆院選直後の11月2日にイギリス・グラスゴーで開催されたCOP26に出席しているからです。

 核拡散防止条約の再検討会議への参加を見送ったのは、核保有国であり同盟国でもあるアメリカに配慮したからとされています。この件については、12月21日に官邸で実施された記者会見でも質問が出てした。岸田首相は、日米間が合意した内容ならを明らかにすることは大事としながらも、やりとりの経緯を口外することは控えたいと回答。そして、12月25日に参加の見送りを正式発表しました。現在、ビデオによる出席を検討しているようですが、おおむねアメリカの主張を聞いたことになります。(最終的に、会議の開催を延期)

 就任から3か月となり、そろそろエンジンが温まってきた頃です。岸田首相の聞く力は、新年から発揮されることはあるのでしょうか? それとも、大物政治家や業界団体やアメリカの言うことを聞く力となってしまうのでしょうか? 2022年、岸田首相の「聞く力」はどのように発揮されるのか? 注目が集まります。

<TEXT/フリーランスカメラマン 小川裕夫(@ogawahiro)>

フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。首相官邸で実施される首相会見にはフリーランスで唯一のカメラマンとしても参加し、官邸への出入りは10年超。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)などがある
Twitter:@ogawahiro

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