安易な「ドイツ礼賛」は危険!“労働生産性が低い”日本はヨーロッパに学ぶべきか
見習うべきは、ヨーロッパの「働き方」ではなく「積極財政」
続けて、藤井氏は「労働生産性は為替変動によって簡単に順位が入れ替わります。競うべきはGDPであり給与水準です。しかし、“労働生産性”を正しく捉えず、ヨーロッパ諸国の働き方を礼賛する愚かしい傾向が長らく見られています」と現状を嘆く。
「確かにヨーロッパ諸国は経済成長を成し遂げている国が多いですが、それは『ヨーロッパ諸国の働き方を見習おう』ということには繋がりません。見習うべきは、“積極的な財政政策”なのです。また、盲目的にヨーロッパを礼賛するべきではありません。リーマンショック、そしてコロナ禍により、経済成長率はヨーロッパ諸国でも下落しています」
優等生・ドイツでも格差拡大中
ヨーロッパ諸国でも日本同様、経済が順風満帆というわけではないらしい。なかでも、“効率的な働き方で経済成長を続けている”というイメージが根強いドイツの現状は、そのイメージと非常に乖離しているという。
「ドイツは輸出大国として長年貿易黒字を達成していますが、その背景には国内生産したものをヨーロッパ加盟国に売り続けてきた。つまりは、他のヨーロッパ加盟国の需要を奪って輸出に依存しながら、なんとか経済成長を遂げている状況です。
また、ドイツは新自由主義路線を推進し、PB黒字化(税収入で国民の生活に必要な支出がまかなえている状態)を目指して財政出動を渋ってきました。そのため、日本と同じように賃金が伸び悩む一方、株主配当金が増加しており、着々と格差が拡大しています。労働生産性という表面的な指標に振り回され、安易に『ドイツはすごい!』と妄信するのは危険です。
とはいえ、日本よりは成長しているため日本よりはマシではあります。しかし、ドイツを始めとしたヨーロッパ諸国の労働・経済モデルは、決してお手本になるほど素晴らしいものではありません」