苦境の串カツ田中でアイドルが接客。“異色の店舗”誕生の舞台裏を聞く
アイドルの姿は「ホスピタリティ精神の最たるもの」
他店にはない独自のサービスを展開するアキバあいどる店。例えば、オリジナルメニューとしてスタッフが目の前でイラストを描く「おえかき ちーぺい焼き」や「おえかき オムそば」などを味わいながら、お酒も飲める。
店舗内のオペレーションもお客さんとの会話を重視。スタッフとの有料チェキ撮影や動画の“投げ銭”に似たチップをオンラインで“推し”のスタッフに送れるシステムなど、ファンとの距離を縮める工夫もある。店舗を運営するまで「アイドル文化との接点はなかった」と話す谷川氏は、企画段階で研究を重ねた。
「準備段階で、秋葉原にあるメイド喫茶やコンセプトカフェを徹底的に回りました。有名店に足を運び、アイドルのライブ会場にも通いました。正直、初めは気恥ずかしさから抵抗感もありましたが、慣れていくうちに飲食業へ関わる身として感動しました。
よく聞く『萌え萌えキュン』というセリフなどを照れ臭そうにせず言ったり、お客さんを喜ばせようと一生懸命なんですよ。接客しながらも自分をアピールしようと頑張る姿勢は、ホスピタリティ精神の最たるものだと思いました」
競合は秋葉原のコンセプトカフェ
オープン1年目の串かつ田中 アキバあいどる店。谷川さんはこの先に向けて、自分たちの課題と展望を語る。
「店舗のコンセプト自体が初めてのケースですし、なおかつコロナ禍の影響もあったので、現状で上手く行っているのかどうかはまだ分かりません。課題は、集客面すべてです。調べた限りで秋葉原に約400軒近くもあるコンセプトカフェが競合になるため、スタッフとファンの方々との距離を保ちながらどうオペレーションするか、売り上げをどう保っていくべきかを模索しています。
前例はないですが、採算が取れそうであれば求められている証拠。現在、店舗展開をしている池袋や大阪もコンセプトカフェがありますし、コロナ禍の影響が解消された段階での多店舗展開もアイデアレベルでは検討しています」
大手飲食チェーンがコロナ禍での起死回生を狙い打ち出した、アイドルをコンセプトにした居酒屋。ファンに愛され続けるのか。明暗を分けるのはこれからだ。
<取材・文/カネコシュウヘイ>