創業120年の老舗が初挑戦「地球に優しいスイーツ」。醸造粕がオシャレに変身
メンバーの認識すら変えた「粕」
実は、リーダーである竹山氏は酒粕が苦手だとか。だが、ひたすら醸造粕をさまざまな食材に混ぜるという作業を繰り返すうち「おいしい加減」が少しずつ分かるようになったという。さらに、商品開発を担当する蕨野氏も「好きでも嫌いでもない」という程度の認識が、プロジェクトに携わるうちに「これ、色々と使えるぞ」と魅力を知るように。
「『この粕をうまく使えたらさまざまな商品に活かせるのでは』と、考えが変わりました。粕は単体だと味に癖があり、苦手な方もいますよね。でも、少し入れるだけで元の素材が劇的においしくなるんです。ラテの場合、何も言われずに飲めば『酒粕』とわからないくらいの味ですが、コクや味の深みが酒粕なしでは全く変わります。
良さを活かしつつも醸造粕特有のクセは抑える……。この調整は難しかったですが、良いバランスで仕上げられたと感じています」(蕨野氏)
食品を重んじる心が根底にある
オリゼージョイシリーズ最大の特徴ともいえる、アップサイクルという概念を取り入れたスイーツ。「エシカル」や「サステナブル」という考えが浸透しつつある現代において時流に乗った商品に思えるが、むしろ創業当時からの考えが根底にあるという。
「食品メーカーなので、原材料の農作物に触れる機会はかなり多いです。それだけに『廃棄をできるだけなくしたい』『食物を無駄にしたくない』という思いが強く、醸造粕や酒粕は廃棄せず、漬物の原料や家畜の飼料に活用していました。とはいえ、直接口にする商品には使用されていませんでした。
醸造粕は発酵物なので、菌数を一定に保つコントロールや日持ちさせることが難しいのです。粕の状態も、柔らかいものからカチカチまで、原料などの条件により変わります」(竹山氏)