創業120年の老舗が初挑戦「地球に優しいスイーツ」。醸造粕がオシャレに変身
みりんと若者の接点を再び作る
それにしても、同社の主力商品と比べてもサイトやパッケージがまるで別会社の商品のように異なることに驚く。
「逆に『よくこれで通ったな』というくらいシンプルさですよね。みりんの場合、主な売り場はスーパーかつ、広告もチラシを使うので『見てもらってなんぼ』という側面があります。ECサイトの場合は全く異なり、パッケージも宣伝やインパクトを残すよりは、手に届いてからが大事です。『その方の生活に溶け込むように』を重視しました」(竹山氏)
温かみがあり家庭的なイメージのある「日の出みりん」とは全くテイストが違うオリゼージョイ。マーケティング担当の丸井氏は、理由のひとつとして「みりんと若者の接点が薄くなりつつある」というものがあったと語る。
「昔は、結婚したら女性は家庭に入り料理をするというのが当たり前でしたが、現代は家庭の形は多種多様です。働き方も同じで、いわゆる若者層が料理をじっくりとする暇もなくなっています。みりんに限らず、発酵食品や季節のものを食べるという日本古来の文化とも離れつつある。
そこで、長年みりんを販売し続けてきた弊社だからこそできることがあるのでは、という考えに至りました。さらにはみりんに抱かれがちな『新しくない』イメージを変えるきっかけにできればと思います」(丸井氏)
みりんとスイーツの感覚の違いに苦労
スイーツもラテも、キング醸造としては今まで取り組んだことのない分野。原材料から製造方法まで、社内でまったく知見のない状態だった。そんなプロジェクトで苦労した点は、なんといっても「味」だったという。
「みりんは調味料なので嗜好に左右されませんが、スイーツは違います。『甘さは控えめが良い』など好き嫌いがありますし、味に関しては個々の主観が入り、意見がばらつきます。大きな声だけが通らないよう、丸井がマーケティング的な考えに基づき、コンセプトに沿ってその意見をまとめてくれました。
さらに、ターゲットが『働く若い女性』なので、自分たちだけの意見にまとまりそうになったら女性の意見を求めながら、調整しました。そして、味を2択まで絞った段階になると、最終的にはメンバーである女性社員の舌にゆだねて決めました」(竹山氏)