タワマン住人も実は大変?“勝ち組”を皮肉る「#タワマン文学」投稿者に聞く
タワマン文学のモデルはあのドラマだった
――窓際さんのタワマン文学の世界観について教えてください。
窓際:大企業のサラリーマンや開業医の専業主婦など、世間的には「勝ち組」とされる人たちの、一面的じゃない姿を描きたいなと思っており、できるだけ具体的に設定を書き込んでいます。我々の暮らす実際の世界がそうであるように、単純な善悪はなく、登場人物それぞれに歩んできた人生があり、固有の事情を抱えているということを伝えるように気をつけています。
――タワマン文学を書く上でモデルのような存在があるのですか?
窓際:モデルといえるか分からないですが、都会のマウンティング文化はフジテレビ系列で2011年に放映された『名前をなくした女神』というママ友地獄を描いたドラマの影響を受けてます。お受験をきっかけにママ友が夫の収入や住んでる場所、夫婦仲、子供の出来不出来などで争う設定は今でも通じるのかなと。人類、どんだけ進歩してないの。
タワマンは「すっぱい葡萄」
――主婦のマウンティングは10年以上前から何ら変わっていないと。ほかにタワマン文学を執筆する上で意識していることはありますか?
窓際:タワマンに住んでない人が想像する、ステレオタイプなテンプレ通りのキャラクターを一度作り、そこから1人ひとりを掘り下げることで深みが出るようにしています。言葉の言い回しなどその場で思いついたものを即興的に組み込みつつ、ノリと勢いで書いているので、最後のオチを捻り出すのに毎回苦労しています。
――窓際さんが投稿したタワマン文学は大きな反響を呼びました。多くの人の心を惹きつける理由は何だと考えますか?
窓際:かつて割安感があった湾岸のタワマンも不動産価格の高騰により、市井の人々の嫉妬心を呼び起こしやすい存在になっていることが最大の理由かと想像してます。
手が届きそうで届かなくなり、だからこそ「酸っぱい葡萄」になってるのかなと。Twitterじゃあるまいし、現実世界でマウンティングしあうゴリラなんてそうそういないと分かるはずなのに、荒唐無稽なタワマン文学を読んで「やっぱりタワマンなんて人の住む所じゃない」と溜飲を下げてるのではないでしょうか。
これが外資系証券会社やベンチャーで一旗上げた人たちの港区低層マンション物語だと、想像力が追いつかずにあまり刺さらないのかなと。何より庶民の私も書けないですし。