首位を奪われたアサヒビール、復活の快進撃。生ジョッキ缶、マルエフがヒット
緊急事態宣言の解除とヒット商品のダブル効果
ここにきてアサヒ復活の狼煙(のろし)が2つ上がっています。1つは緊急事態宣言が解除され、飲食店の酒類の提供が解禁されたことです。日本フードサービス協会の調査によると、GoToEatキャンペーンを実施した2020年10月の居酒屋の売上高前年同月比は、年間の売上高前年同月比の平均値より13ポイント高い、64%となっています。
今後、営業時間の制限がなくなり、飲食店への協力金もなくなります。政府や自治体は飲食店やホテルなどに向けた救済措置、経済対策をとる必要に迫られるでしょう。リベンジ消費と消費喚起策で居酒屋需要は回復が見込まれます。
もう1つが家庭用ビール商品のヒットです。アサヒはビールへの依存度を高める戦略をとったため、今から発泡酒、第3のビールのシェアを獲得するには、資金と時間が必要です。しかも戦略的にそれを進めたとしても、立ち上げたブランドがヒットするとは限りません。
その点、「アサヒ生ビール」と「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」は既存商品の切り口を変えただけで、ヒットへと導きました。それが今回のポイントです。
飲食店の一部でのみ扱っていたマルエフ
マルエフこと「アサヒ生ビール」は、1986年に発売されたビールで、のどごしのよいすっきりとした味わいが特徴です。翌年にスーパードライが発売されてヒットしますが、マルエフはその足掛かりとなりました。1993年に缶の販売は終わったものの、一部の飲食店で販売は継続していました。根強いファンが残っていたのです。
アサヒは消費者のニーズが変化する中、スーパードライブランド1本で勝負するのは限界だと判断。マルエフの復活を計画しました。年内150万ケースを目標とし、2026年には1000万ケースを目指しています。見事、生産が追い付かないほどのヒットとなりました。
「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」は自宅でジョッキ感覚が楽しめる商品です。自宅でしか飲めなくなった世相に合わせた商品でした。2021年4月にコンビニ限定で発売されると、4月販売予定分がわずか2日で売れたために品薄となり、出荷を一時停止。その後、年内は月1回・数量限定での発売を予定しています。
シェアを奪われたアサヒの驚くべき快進撃が始まりました。シェアトップを奪還することができるのか。熾烈なシェア獲得争いに注目が集まります。
<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ>