ヤマト独り勝ちの宅配便業界。「佐川&日本郵便」タッグで牙城を崩せるか
2021年9月10日、宅配便業界2位の佐川急便と3位の日本郵便が、手を組んでヤマト運輸に対抗する策を打ち出しました。今回の提携により、11月以降、佐川急便が集荷した小型荷物を日本郵便が「ゆうパケット」として配送するようになります。両社は2004年からメール便で協業していましたが、提携の範囲を拡大します。
佐川急便はBtoBに強みを持っており、ECで需要が膨らんでいる小型荷物は不得意な分野。日本郵便の投函可能な宅配サービス「ゆうパケット」サービスを扱うことにより、顧客のニーズに応えられる体制を整えました。日本郵便は荷物の取扱個数を増やすことができます。
この記事では、佐川急便と日本郵政の提携の背景について解説します。
需要がうなぎのぼりの宅配便業界
EC取引が活発化したことにより、宅配便全体の取扱個数は堅調に推移しています。国土交通省の「令和2年度宅配便取扱実績について」によると、2020年の宅配便取扱個数は48億3647万個で前年比11.9%の増加となりました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で行動制限が課され、EC取引量が増加したことで宅配便の取扱個数も増加しました。2019年は前年比0.4%の増加に留まっています。
グラフを見ると、新型コロナウイルス感染拡大による新常態で取扱数に拍車がかかっていることがよくわかります。佐川急便と日本郵便が提携を強化した背景の一因として、ECの取引増により小型便の需要が膨らんだことがあります。
価格改定で明暗が分かれることに
次にヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の荷物の取扱数を見てみます。2020年と2021年の4月から6月までの3か月間の各社累計取扱数です。驚くべきことに、ヤマト運輸は2021年に前年比50%以上も増加しました。佐川急便は1.4%の増加に留まり、日本郵便にいたっては13.8%落としています。
ヤマト運輸の急増に一役買ったのが、「ネコポス」と呼ばれるサービスです。実はヤマト運輸の2021年4月から6月までの宅急便の取扱数は4億4400万個で前年比3.8%の増加でしたが、ネコポスは9500万個で50.7%の増加でした。ネコポスとは、小型の荷物を翌日配達でポストに投函するサービスで、2015年4月から市場投入しています。なぜ、急速に数を伸ばしたのでしょうか。
2020年10月ヤマト運輸は「らくらくメルカリ便 ネコポス」の料金を195円から175円に値下げしました。同時に取扱サイズを厚さ2.5cm以内から3cmに拡大。メルカリ利用者への利便性を上げ、費用負担を軽くしたのです。
同時期に値上げをしたのが日本郵便。「ゆうゆうメルカリ便 ゆうパケット」は175円から200円となりました。この価格改定の差がヤマト運輸独走態勢を後押しする主要因となりました。