ネットで不評の渋沢栄一1万円札。実は「日本の凄い技術」が詰まっていた
わざわざ改刷する意味は?
紙幣は定期的に改刷されています。わざわざ改刷する意味はどこにあるのでしょうか? 改刷する理由はいくつかありますが、最大の理由は何と言っても偽造防止です。
現代社会において、お金と無縁で生活することはできません。お金は紙幣と硬貨に大別できますが、紙幣は言うならば単なる紙でしかありません。それにも関わらず、紙幣で物を買うことができたり、サービスを受けられたりするのは政府が紙幣に信用と保証を与えているからにほかなりません。
諸外国では、自国が公式に発行している通貨が信用できないという理由で、市井では他国の通貨を使用していることもあります。日本では、そんなことは起きていません。しかし、偽造紙幣が多く出回れば、円を使う人々は疑心暗鬼になるでしょう。円の信用がなくなれば、経済活動が停滞し、日本経済は大混乱に陥ります。大袈裟な話ではなく、偽造紙幣の流通は国家を揺るがす一大事なのです。
そのため、政府や日本銀行は紙幣に偽造防止策を何重にも講じています。つまり、日本銀行券は最高の技術を集めた、国内最高レベルの印刷物と形容できるのです。
肖像が描かれているのも「偽造防止」のため
紙幣には、どんな偽造防止技術が使われているのでしょうか? まず紙幣を手にしたら、誰もが最初に目がいくのは肖像です。肖像が採用された日本初の紙幣は、1881年に登場した神功皇后が描かれた1円札です。なぜ、紙幣に肖像が採用されるようになったのか? それにも偽造防止が関係しています。
私たちが日常的に接する家族や友人、会社の同僚などの顔色が悪かったり、顔に傷やアザがあったりしたらすぐに気づきます。紙幣に肖像画が描かれている理由も、それと同じです。いつも見慣れた顔が、少しでも違っていたらすぐに気づきます。
D券まで、紙幣に描かれる肖像は高齢の男性がほとんどでした。それにも理由があります。昔の偉人は多くがヒゲをたくわえていたからですからですが、ヒゲを紙幣で再現することは難しく、ヒゲは偽造防止に寄与していたのです。また、高齢であることから顔に皺が多いことも偽造防止に役立っていました。
E券の5000円札には樋口一葉が採用されました。樋口は20代で没したために顔は若々しく、そのために偽造防止の観点から肖像に採用することに対して難色も示されたようです。それでも樋口が採用されたのは、印刷技術が向上したことで偽造が難しくなっていたからです。