五輪で世界が注目!「食品サンプル」会社の女性社長に聞く、変遷とこれから
10年でめざましく進化する食品サンプル業界
――最近ではSNSでもフェイクフード関連の写真を上げる人が増えていますよね。デザインポケットさんでは、SNSとどう関わっていますか。
倉橋:SNSでいえば、ひとつ困っていることがあって。実は、写真を上げてもリアルすぎて、ただの食べ物にしか見えないんです。Instagramなどで食べ物の画像と一緒に並んでいると、本物にしか見えず埋もれてしまう。
サンプルであることを気付いてもらえるよう、キーホルダー部分にアップしてみたり、工夫はしているんですが……。リアルフードの中、どう目立たせるかが今後の課題です。
――スクールの創立や体験教室を開いたり、他とは違った角度から業界と向き合っているように感じます。今後、業界はどうなっていくと予想されますか。
倉橋:やはり「残っていってほしい」という思いが強いです。食品サンプルといえば、昔は飲食店のディスプレイに並んでいるだけの存在でしたが、今は違います。それに今は、突出した特徴がないと売れませんし、10年前と比べても目が肥えたお客さまが増えているなと。同時に、職人さんの技術や材料のクオリティも年々高まっています。これから、どんどん新たな食品サンプルが生み出されていくのが楽しみですね。
思い出やストーリーを残せるものに
――最後に、倉橋さんの思う食品サンプルの魅力を教えてください。
倉橋:最大の魅力は「おいしそうを形にできる」こと。料理や食材を、立体として表現できるのは、他にはない魅力です。また、依頼で「ひっくり返すと別の面を見せるちらし寿司」のサンプル制作を依頼されたことがあります。言葉にすると難しい料理の説明も、サンプル1つで可能にできるのも強み。
最近は興味深い依頼も増え「亡くなったおじいちゃんの好きだった食べ物を再現したい」や「昔の給食を再現してほしい」など……。もはや食品サンプルという枠を越え、思い出やストーリーを形に残せるものになりつつあると感じていますね。
<取材・文/つちだ四郎>