国民的アイドル・嵐を生んだマーケティング術。カギは「6人目の嵐」の存在
深く長く愛されるブランドには理由がある
清水:『「嵐」に学ぶマーケティングの本質』について、嵐でマーケティングを学ぶとはどういうことでしょうか。
射場:今回の著書では、ブランディング手法、マーケティング戦略、デジタル化の方法について全て嵐を事例にして説明させていただいています。マーケティング視点で物事を捉えることができるようになると、自分のキャリアを考えるときや自分の今関わっている仕事の戦略などにも活かすことができます。
新規事業をデジタルで展開しようとするときも本質的な考え方は変わらないと思っています。消費者をどう見るか、ビジネスの機会をどう考えるかという視点を、嵐の示してくれた実行例から学んでいただけたら嬉しいと思っています。
人に深く長く愛されるブランドには、必ずそれなりの理由があります。Appleが愛されるにはAppleの理由があり、テスラが人気なのにはテスラにしかない理由があります。
正式な数字の発表はありませんが、ファンが会員番号から推定している数百万人とも言われる嵐ファンが、毎年年会費を払って嵐と繋がり続けたい、応援し続けたいと思うにはそこに理由があるのです。ここ10数年、トップアイドルの座に居続けた嵐からは、長期的に人を惹きつけるブランドやマーケティングの本質を学ぶことができると思っています。
ブランドを正しく理解してもらうことが重要に
清水:ブランドやブランディング、マーケティングを嵐で説明するとどんな形になりますか?
射場:ブランドは人の頭の中や心の中に存在するため、実は可視化することはできません。清水さんの考える嵐ブランドと、私の嵐ブランドと、視聴者の方の嵐ブランドは違ったりするものです。
その中ですごく重要なのは、ブランドが誰をターゲットにするか、一番大切なのは誰かということです。嵐の活動を見ていると、嵐がブランドターゲットにしているのは嵐ファンです。そして、その中でも、嵐のファンクラブ会員が、メインのターゲットになっていると思います。
例えば、毎週放送される嵐のTV番組を3週間に一度しか見ない人と、ファンクラブに所属して、毎週欠かさずに見てくれたりライブに来てくれる熱量が高いファンが居たとするときに、嵐がターゲットにし、深く理解しようと努力しているのは後者であると感じています。
嵐メンバーは、嵐ファンたちに自分たちがどう思われたいのか、どんな関係を築いていきたいのかをきちんと定義し、それをぶらさずに実行し続けていると思います。ブランドを作るときに一番大切なのは「誰にとってどんなブランドになりたいか」を明確にすることで、嵐はそこが物凄くできている印象を受けました。
近年はメディアだけで全ての人にメッセージを伝えていくのが難しくなっています。そのため、人を通じて広げていくことがすごく重要です。ブランドに対して熱い思いを持つ人たちにブランドを正しく理解してもらい、多くのファンと繋がっていくことは非常に重要になっていくと言えるでしょう。