bizSPA!

“大味アクション映画”からの脱却…最新MCU作に見る、アメコミ映画の現在地

暮らし

固定概念を壊した『デッドプール』

デッドプール

『Deadpool』 [Blu-ray] Blu-ray オランダ語版

 基盤を作ったのは『アイアンマン』であるが、『デッドプール』の存在が日本において、より一般的にアメコミという大きなブランドの普及を一気に加速させたのだ。

 それまでのヒーロー像とはかけ離れていたことから、意外なことに『デッドプール』はアメコミ映画に偏見があって観ていなかった女性ファンを多くアメコミ映画に誘導させることとなった。『デッドプール』公開当時、Twitterにデッドプール本人がツイートをするアカウントが誕生し、若い世代に向けてプロモーションをかけたのも要因のひとつ。

 加えて劇中でもマーベルでも制作会社の違いや、同じキャラクターを別の俳優が演じていることなど、メタ的な自虐ネタが盛り込まれていた斬新さもあって、日本での興行収入は約20億円をたたき出した。これは「X-MEN」シリーズとしては、歴代1位の記録である。

 MCUがアメコミというより、映画としてのブランドなりつつあった時に、「アメコミがおもしろい」とアメコミ自体を活気づける起爆剤となった印象も強い。

『ブラック・ウィドウ』が作られたのも…

 日本でも漫画といっても、少年漫画、青年漫画、少女漫画などなど様々なものがあるように、アメコミも当然ながら同様である。日本でアメコミがなかなか普及しなかった大きな理由のひとつには「アメコミ=ヒーロー」という、かなり極端な固定概念があったからに違いない。

 その壁は、MCUや『デッドプール』によって、少し超えられたという印象はあるものの、それに甘んじていては、また急降下でアメコミ低迷期なんてことが起こりかねない。

 映画においても、マーベルもDCも量が多くなってきてしまうとマンネリ化してきてしまう。そこで次のステージとして、今までは大味な娯楽アクション映画という側面が強かった作品を補うような作品を投入していく傾向になりつつある

BW (1)

今まで描き切れていなかったキャラクターを掘り下げる流れに ©︎Marvel Studios 2021

 例えば『ブラック・ウィドウ』は、計7本のMCU作品に登場していながらも、どうしても映画の尺のなかでは、描き切れていなかった「ブラック・ウィドウ」というキャラクターにスポットを当てている。アベンジャーズの一員となったブラック・ウィドウは、鍛え上げられた肉体を持つロシアの女性暗殺者で、本作ではスカーレット・ヨハンソンが演じている。

 今後、「ホークアイ」や「ニック・フューリー」などといった映画ではサブ的な扱いだったキャラクターたちも補い、より濃いキャラクター造形と世界観の拡大をしていくことの意思表明であるかのような作品に仕上がっていた

おすすめ記事