“大味アクション映画”からの脱却…最新MCU作に見る、アメコミ映画の現在地
『アイアンマン』も製作当時は批判が
そんななかで2008年に公開されたのがMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の記念すべき第1作『アイアンマン』(日本の場合は『インクレディブル・ハルク』が先に公開)。日本では興行収入は9.4億円、観客動員数は62.6万人にのぼった。
アイアンマンの映画化企画は、2000年以前から浮いては沈みの連続であった。トム・クルーズなどの大物俳優が候補に挙がるなかで、主演に抜擢されたのは、ロバート・ダウニー・Jr。過去に薬物中毒で逮捕と施設送りを繰り返し、トラブルメーカーとしての印象が強かったこともあり、製作する際には、かなりの批判を浴びた作品なのだ。
監督を務め、ロバートを抜擢したジョン・ファヴローは、当時「彼の波乱万丈な人生がキャラクターに重みを与える」と発言していることもあって、『アイアンマン』はロバート本人に近いキャラクター構造となっている。
『アベンジャーズ』以降、宇宙からの驚異に恐怖する様子も、ロバートが過去に感じていたプレッシャーや重圧のようなものが、ネタとして活きているような感じがしてならない。
ブームに火をつけたのは『アイアンマン』
それはさておき、実はこの『アイアンマン』こそが、日本においてのアメコミ映画市場を大きく変えた、分岐点である。ガンダムやマクロスなど、ロボットヒーローが大好きな日本人ということもあって、メカメカしい『アイアンマン』は、アメコミ映画としてよりも、ビジュアル的に映画をヒットに導いた。
さらにアメコミ界としては当たり前だったが、映画界としては画期的かつ冒険的であった、続編でもない作品同士の世界観を繋げるユニバース化を打ち出した作品でもあったことも大きい。次へ次へと誘導されるように、観ていかなければならないようなスタイルは、単独で製作した場合、日本ではヒットが見込めないような作品までも巻き込んでいったのだ。
いつしかブランドとして確立された世界観から抜け出せなくなっている人が多くなったことから、今のアメコミ映画ブームは『アイアンマン』がなければ、火がつかなかった可能性は高い。
しかし、「アメコミ=勧善懲悪なスーパーヒーロー」というイメージを持った人がまだまだ多かった。そんな意識をガラりと変えたのが2016年に公開された『デッドプール』である。