発達障害の同僚とどう向き合うか…シビアな現実を人事部が語る
面接時には分かりにくい、職場との適性
一般入社と比べて、障害者雇用の給料は低いといいます。理由は会社側が仕事を探すからです。決まった仕事があって、そこに入ってもらうという形ではなく、「オープンポジション」で、あらかじめポジションを定めず人物本位で雇った後、その人にできることを見つけて、適正な所へ配属するという形をとるので、給料に差が出てしまうのです。
精神障害者の場合はスキルがある場合が多いので、やや高めに設定されるといいますが、勤務態度が悪い場合は異動や転勤などもあるといいます。
また、別のサービス業の人事担当者の話によると、面接で精神障害かどうかを見抜くことは難しいとのことです。
「就職活動の面接などでは、非常に調子が良いときに来るから、結構受け答えがいいわけですよ。こちらもすっかり惚れ込んで『ぜひ取りたい』となりますよね。支援機関がついてるし、ハローワークも支援してくれますから。
ある女性のケースですが、入社してから職場に自分専用の扇風機を持ってくる。冬場でも扇風機をかけるんですね。夏冬問わず、暑いのでほとんどノースリーブ、タンクトップ1枚で仕事をしており、涼しい会議室に行って一人でソファーで寝ているとか。お客様対応ができなかったりして、迷惑がかかってしまい、その方は長く続きませんでした」
その女性は感覚過敏で、実は自分の特性はわかっていたとのことです。とはいえ、面接で自己申告はしません。自閉症スペクトラム障害(ASD)の場合、羞恥心を感じることがないケースもあるため、女性でもこういった例は少なくありません。
精神障害については職場定着が困難なケースが多い
また、事務職においては高機能の発達障害を持っているケースもあります。
「英語が非常にできる人がいまして、その人は発達障害の中で自閉症スペクトラム障害でした。社内でもとてもおとなしいです。その代わり決して周りの人のことを考えたりもしないし、良く言えばマイペース。他人に対しても構えたりすることもなく、勤怠も良かったです。
ただし、残念ながら二次障害を患って、うつで休職をしました。周囲への影響はなかったのですが、他の症状が出ることもありますので、配置には気を使っています」
各企業の人事は、法定雇用率を達成するため、障害者雇用を推進しても、その後、長くその会社で就労できるかどうかの問題が待っています。身体障害や知的障害の場合は、比較的安定しているのに対して、精神障害については定着が困難なケースが多いのです。
2013年の厚生労働省の障害者雇用実態調査によると、平均勤続年数は、身体障害者10年、知的障害者7年9か月ですが、精神障害者は4年3か月と職場定着が短い傾向が見られます。
理由としては「職場の雰囲気・人間関係」「疲れやすく、体力や意欲が続かなかった」「症状が悪化(再発)した」「作業、能率面で適応できなかった」などが挙げられています。
企業側も改善策として、「調子の悪いときに休みを取りやすくする」「コミュニケーションを容易にする手段や支援者の配置」「短時間勤務など、労働時間の配慮」などで対応を図っているのが現状です。
今後、多様性を受け入れる社会の実現のため、発達障害者の雇用は増加していく傾向にあります。その特性や、接し方などを専門家を招いて社員に理解させる啓蒙活動が求められています。
<取材・文/草薙厚子>