「テレワーク実施率」が伸びないなかで目指すべき“ハイブリッド型”とは/常見陽平
ハッピーシナリオとバッドシナリオ
現状をふまえるなら、出社とテレワークのハイブリッドがやはり望ましい。テレワークに向いたツールやサービスがたくさん登場しているが、個々の通信環境などの問題もあるからだ。例えば、コロナ禍でテレワーク化が進んだことで一戸建てが売れているという話もあるが、人によっては、6畳1間のワンルームでどうしても仕事をしなければならない。
オンラインセキュリティの向上により個々の作業も自宅でこなせるようになったが、周りに誰かがいることで集中できるというタイプの人もいるので、上手く使い分けるのが今後のハッピーシナリオだろう。
一方で、出社とテレワークの議論について「&」ではなく、延々と「or」で論じ続けられるのはバッドシナリオだ。例えば、テレワークに対して、通勤時間が解消されて歓迎する声もある。
それを受けて従業員への定期代支払いをやめて都度の交通費精算に切り替えた会社もあるが、従業員側としては、いったんは交通費を持ち出す必要もあるし、自宅の電気代が高くなるなどのデメリットも考えられる。
オフィスで働くメリットもなくはない
職場環境にしても、本来はプライベートの空間であったはずの自宅で日中ずっとカメラを接続しなければならず、気が抜けない環境になっている事例もある。
オフィスも悪くないもので、周りの人たちと悩みを共有したり、気軽に相談できたり、誰が何をしているか分かりやすいメリットもあるが、会社側も従業員個々の動きを把握しづらい。一方で、「カメラオンの強要」など、監視はハラスメントにもなりえる。
筆者は社会人になったばかりの頃、営業職だったが「内勤日」と呼ばれるものがあった。その日は「数字の読みあわせをやる」「他部署のスタッフと打ち合わせをする」と、対外的ではない仕事へ打ち込む日と決まっていた。この内勤日のように、肉体労働を伴う仕事、接客など人との接点のある仕事でもデスクワークの日はテレワークとするというのも選択肢のひとつである。