東大生が“浪人生活”で得た最強メンタル「失敗を恥ずかしいと思わなくなった」
自分を律することができるかどうか
――みなさんが多浪を経て東大に合格したように、何か大きな目標を成し遂げられる人もいれば、上手くいかない人もいると思います。その違いはどんなところだと思いますか?
安田:自分を律することができるかどうかですかね。客観的に自分の足りないところを知る。時間が足りてなかったらもっと時間を増やすとか、足りないものを見つけてそれを補っていくっていう作業ってすごく大変なんですよ。それができるかどうかがポイントなのかなと思います。
あとは、そのときの雰囲気もあるかなと思います。たまたま機会がめぐり合ってないだけとか。就職氷河期だったら、どれだけ優秀でもいいところに就職できないケースもあるじゃないですか。時の運というのはどうしてもある。そこは残酷ですけど、仕方ないのかな。必ずしも本人の問題ではない。
坂本:ありきたりですけど、諦めずに挑戦し続けることが大事なのかなと思いますね。受験でいったら浪人したとしても1年で諦めてしまう人が大多数だと思うんですよ。そこで妥協して別の道を進もうとせず、第一志望を目指し続ける。そこの精神力というか、もう少しだけ頑張ってみようという気持ちが大きいと思います。
もちろん、諦めない選択も経済的に恵まれた環境があればこそだとは思いますけど、チャンスがあるのなら、挑戦し続けることが目標を成し遂げるためには絶対に必要ですよね。
――もしかしたら、読者のなかには仕事に就きながら東大を目指す人がいるかもしれません。そういった人に何かアドバイスはありますか。
安田:正直、社会人経験が受験勉強のアドバンテージになることはほとんどないと思うんですよね。もし再受験したい人がいたら受験生と同じかそれ以上に謙虚な気持ちで受験に臨む必要があると思います。
すでに他の大学を卒業していたとしても、それが東大受験に活かせるとは限らない。多浪交流会のなかには仮面浪人して入学した人も多いですが、他大学で学んだことや、社会人経験を活かすよりかは、イチから学び直すくらいの気持ちが重要だと僕は思います。
失敗を恥ずかしいと思わないで
――杉山さんはどうですか?
杉山:安田さんと真逆な意見になるんですけど、僕の知人で他大学を卒業してから社会人を経て27歳で九州大学の医学部に入学した人がいます。社会人で再受験して受かってる人って、それまでの経験を活かせてる人が多いと思います。直接的な学力や知識じゃなくて、自分のできないところを見つめ直す力もあるけど、別の大学や社会人経験が勉強に向かう姿勢に影響すると思うんです。
現役や浪人1年目の頃はつい余計なことを考えてしまったり、気分の浮き沈みが激しかったりすると思います。でも社会に出ていろいろ経験してきた人は、勉強してる姿を見ると淡々と黙々やっている。それで受かっていくという人が多い気がします。むしろ現役生や普通の浪人生にはない強みなのかなって僕は思うんですけどね。
――最後に、読者の若手ビジネスマンに向けたメッセージをお願いします。
安田:学生の身からしたら、社会人って先輩じゃないですか。メッセージといっても難しいですね……。社会に出て何か失敗することってあると思うんですよ。僕らみたいな多浪生は、それを糧にして頑張って生きています。だから、ぜひ失敗を恐れずというか、失敗してもそれをプラスにして頑張っていただけたらと思います。
浦:私が多浪経験で得られた一番大きなことは、失敗を恥ずかしいと思わなくなったことです。どうしても現役の頃は「失敗=悪いこと」「ストレートに進んでいくことが一番の正義」って考えがちですよね。それで失敗から目を背けてしまう。
浪人という挫折経験を経たことで、できないことは仕方のないことで、そのできない状態から何をするかが一番大事だという考えに変わりました。失敗することが大事なんだなと今は思っています。
<取材・文/目黒川みより>