すき家は一人勝ち、松屋は大苦戦。コロナ禍の牛丼チェーンを徹底比較
新型コロナウイルスの感染拡で大打撃を受けた飲食業界。政府や自治体からの休業・時短要請だけでなく、外出自粛や学校の授業が遠隔で行われたことにより、「牛丼チェーン」も大きな影響を受けました。
牛丼御三家(吉野家・松屋・すき家)で明暗がくっきりと分かれたことは非常に興味深いです。吉野家ホールディングスは売上高が前期比21.2%減の1703億4800万円、営業損失が53億3500万円。松屋ホールディングスは売上高が前期比11.4%減の944億1000万円、営業損失が16億8300万円。2社ともに苦しい状況です。
しかし、すき家を運営するゼンショーホールディングスは売上高が5950億4800万円となり、前期比5.6%の減少に留めたのです。これほどの大惨事にも関わらず、120億8800万円の営業利益を出しました。
同じ牛丼店を展開する3社で、なぜこれほどまで差が開いたのでしょうか?
1店舗当たりの売上高が高い吉野家
3社の違いは出店戦略とターゲットにあります。まず、各社既存店の売上高・客数の推移を前年対比でみてみます。
注目したいのは客数です。通期で吉野家が11.5%減、松屋が19.1%減ですが、すき家は5.3%減に留めました。
コロナ禍でのすき家の勝因のひとつは、既存店の客数の減少を抑えたことです。なぜ、他社と比較して減少幅を小さくできたのでしょうか。
ロードサイドに積極店に出店するすき家
ヒントは1店舗当たりの売上高に隠されています。各社のコロナ前・コロナ禍での3社の1店舗当たりの売上高を比較してみます。1店舗当たりの売上高を示した表の黄色く塗った箇所に注目してください。
コロナ前の吉野家1店舗当たりの売上高は9200万円でした。松屋は8820万円、すき家は7330万円です。吉野家とすき家の1店舗当たりの売上高は20%以上もの開きがあるのです。
これは出店場所の違いに由来するものです。吉野家と松屋は都市部や繁華街に集中して出店する戦略をとっています。一方、すき家は都市部、繁華街もありますが、郊外のロードサイドにも積極的に出店していました。
吉野家と松屋は人通りの多い場所で勝負をかける一極集中投資で、高回転型のビジネスです。それに対してすき家は分散型の出店戦略をとり、1店舗当たりの売上高も低いものになっていました。分散型投資とも呼べる安定性重視のビジネスです。