車椅子レースで五輪代表へ。佐藤友祈が伝えたい「チャレンジする大切さ」
4年に1度のスポーツの祭典、東京オリンピック・パラリンピックの開催が迫っている。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年からの延期となった今大会に向けて、出場予定だった多くのアスリートが現在も日々、トレーニングに励み続けている。
東京大会でのパラ陸上、車椅子レースで金メダル獲得の期待が大きい佐藤友祈選手(31歳・@sato_paralympic)もその一人だ。2012年のロンドンパラリンピックで車椅子種目を知り、出場を果たした2016年のリオパラリンピックでは、2種目で銀メダルを獲得。
現世界記録保持者でもある車椅子種目での「絶対王者」は、東京大会での金メダル獲得、世界記録更新を公言するなどそのポジティブな姿勢からは心身ともに力強さが伝わってくる。
自身の競技や東京大会について、今年2月にはアスリートとして大きな転機となるプロへの転向を果したことで、競技、プライベートにおいてどのような変化があったのか、インタビューを敢行した。
プロ転向で変わったのは競技への集中
――2月のプロ転向以降、大きく違う点はどんなところでしょうか?
佐藤友祈(以下、佐藤):環境面では特に大きく変わったことはないですが、競技に対してより集中する時間を増やすことができています。また、練習などの時間以外ではSNSを通じて、ファン獲得なども含め、色々な人たちとの交流を積極的に図れていますね。
(転向前は)フルタイムでの勤務後、トレーニングという生活だったため、なかなかSNSでの活動に力を入れることができなかったですし、プロになってから発信した内容は(プロとしての)個人の責任となる。責任が生まれた一方、自分の思っているありのままを伝えられる、いい機会ができています。
――現時点で、アスリートの立場からの東京オリンピック・パラリンピック開催へ向けての想いは。開催を危ぶむ声も少なくないですが。
佐藤:開催が危ぶまれているとは思っていません。前提として、大会組織委員会が開催に向けて進めてくださっているなか、「開催されないかもしれない」という思いは捨てているので。もちろん直前で(新型コロナウイルス感染による)状況が悪化し、大会ができなくなったとしたら、それはしょうがないですが、今の段階から開催を危ぶむというような雑音は耳に入れる必要はないと思っています。
自信の土台は目標を達成してきた経験
――東京パラリンピックでの「金メダル獲得、世界記録更新」を公言するなど、競技に対しての大きな自信が伝わってきます。その自信の裏付けとなる、思い、経験などを具体的に教えてください。
佐藤:今まで自分が目標として掲げてきたものを、すべて達成してきました。リオパラリンピックでの金メダルを目標として競技を始め、それは未達(400m、1500mとも銀メダル)に終わりましたが、それ以降、翌年の世界選手権の金メダル、2018年の世界記録更新、2019年の世界パラ大会の金メダル獲得など、目標とし、それらを実現してきたという経験があるからです。
――競技開始から3年目の2015年にはドーハ世界選手権400mで優勝を果たすも、2016年リオパラリンピックでの2種目(400m・1500m)で銀メダルという結果でした。目標の金メダル獲得には届かなかった初めてのパラリンピックでの成績について、嬉しさ、悔しさと、どちらが大きかったでしょうか?
佐藤:当然、喜びももちろんありましたが、悔しさがほとんどでした。金メダルを獲るはずだったのに、獲れなかった。その時のコンディションに、自分が合わせきれなかっただけですけど、嬉しさよりも悔しさのほうが上回っていました。
2015年世界選手権での金メダルも、僕がリオで敗れたアメリカの選手が出場していなかった(レイモンド・マーティン、ロンドン・リオの金メダリスト)。1500mでは大差を付けられて負けていましたし、結果的に優勝したというみたいな感じで。僕の中ではスッキリとしないままでした。